一番おいしかった塩にぎり 大震災【記憶を刻む】

後川正裕さん(39)=岩手県盛岡市

 3月11日、三陸鉄道に勤めていた私は、大きな揺れに襲われ、岩手県宮古市の合同庁舎に逃げ込んだ。周囲の状況は何も分からない。電気は消え、水道も出ず、自家発電の明かりだけがともる建物で何百人もの人々が広間にうずくまっていた。

 午後9時を回ったころ、おにぎりが配られた。「そういえばずっとご飯を食べていなかった」と、急に腹が減ってきた。人数分やっと炊いたと思われる、拳ほどの小さなおにぎり。一口食べた瞬間、猛烈なおいしさに涙があふれそうになった。のりも巻かれていない塩にぎりの一口目が、今まで食べたおにぎりの中で一番おいしかった。震災から10年。おにぎりを食べたり作ったりするたびに、あの味を思い出す。

 

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