筑豊の大学生、滞在わずか1カ月で大阪の実家へ

 「高校3年の春休みが続いているみたい。『大学生』といわれてもピンとこない」。新型コロナウイルスの影響で、思い描いたキャンパスライフとならないまま1年を過ごした大学生がいる。昨年4月、近畿大産業理工学部(飯塚市柏の森)に入学した大阪府出身の男子学生(19)は、ほとんどの授業を実家からオンラインで受けた。「大学に通って教室で友達と授業を受ける。そんな平凡な学生生活ができるだけで良いのに」と肩を落とす。

 学生が初めてキャンパスを訪れたのは4月初旬。学生証の交付や履修方法のガイダンスを受けるためだった。新入生同士が初めて顔を合わせる日。友人を作るいい機会だったが、「(コロナ対策で)すぐに帰るよう指示されて、他の新入生と話す時間はほとんどなかった」。その直後、緊急事態宣言が出され、大学は休校に。ひとまず大阪の実家に戻ることに決めた。

 授業が始まったのは、5月中旬だった。前期は対面授業が全面中止となり、実家で受講することにした。当初は「オンラインでもグループワークができて楽しかった。本当は離れたくなかった地元に残ることができて、ラッキーだとも思った」

 ただ、接続不良で音が聞こえなくなったり、通信が途絶えたりすることもしばしば。集中力は続かず、授業後などに気軽に質問もできない。試験ができないため、成績は提出物やリポートで決まった。ふと振り返ったとき「自分の力になっているのかな」。不安が湧き出した。

 「サークル活動も始まっているかも。一度大学に行ってみたら」。後期の開始を控えた9月初旬、親と相談して飯塚へ向かった。週に1回、特定の講義だけ対面授業を再開するとの知らせもあり、初めて大学で授業を受けられることに。期待を胸に校門をくぐったが、目の前には閑散としたキャンパス。サークル活動は制限されたままで、教室に集まったのも10人程度だった。

 対面授業はオンラインよりも集中できたが、課題はパソコンで提出、前後の授業は学外からオンラインで受ける必要があった。不便なことばかりで、結局教室に行ったのはこの日限り。同じように後期から飯塚に来た数人の同級生と知り合ったが、彼らも飯塚での生活に意義を見いだせず、実家へ帰った。「友人がいないのならここにいる意味がない」。学生も一カ月足らずで飯塚を離れた。

 大阪では、午前9時から一日中パソコンに向かう生活に戻った。高校時代の友人の中には大学での授業を受けている人もおり、新しい友達もできたようだった。「『大学生活が始まっている』と、一歩先を行っているように感じた。うらやましかった」。自分はオンラインのまま、昨年12月に本年度の授業が終わった。

 「この1年、頑張ったと実感できることが何もない。1年後には就職活動が始まるのに…」。先行きの見えない大学生活に焦りだけが募る。現状を変えようと、4月からは飯塚で過ごすと決めた。地元を離れてさまざまなことに挑戦したり、友人と深く付き合ったりすることで学べることもあるはずだからだ。「大学の友人と会ってみたい。オンラインでしか話したことがない人もいるから」。来年度以降の明確な授業方針は、いまだ大学から知らされていない。 (長美咲)

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