収束へ「史上最大の作戦」 成否は五輪に影響も

 菅義偉政権が新型コロナウイルス対策の「切り札」と位置付けるワクチンの国内接種が17日、始まった。コロナ対応の「後手」批判で体力を削られた政権にとって、国民の期待感が跳ね上がっているワクチンプロジェクトは成功が義務付けられた「史上最大の作戦」(政府高官)。その成否は、夏の東京五輪・パラリンピックの開催可否にも影響しそうだ。

 「(ワクチンは)感染拡大防止の決め手になる。しっかり接種を行い、何としても収束に向かわせたい」。この日、医療従事者への先行接種が始まったワクチンについて菅首相は、衆院予算委員会の集中審議で率直な希望を答弁に乗せた。

 コロナ禍が支持率落下につながった首相はかねて、周囲に「ワクチンで雰囲気が良くなるはずだ」と伝え、早期の接種開始にこだわってきた。年初の記者会見の際に「2月下旬」としていた時期を、2月2日の会見では前倒しして「2月中旬」と表明。確かな前進の一歩の裏側には紆余(うよ)曲折があった。

 複数の関係者によると、官邸は1月中旬までは国内接種体制の構築に集中する傍ら、ワクチンの海外調達は厚生労働省に任せきりにしていた。その結果、米ファイザー製ワクチンを製造するベルギーからの輸入時期が不透明になるなど「トラブル続きだった」(首相周辺)。厚労省が当初、ファイザー日本法人だけを窓口としていたことも一因だった。

 そこで、てこ入れに入った官邸スタッフはファイザー米国本社とコンタクト。さらに1月18日にワクチン特命担当に任命された河野太郎行政改革担当相が自ら本社との直接交渉に乗り出し、調達を迅速化する道を開いたという。首相周辺は「役所任せでは駄目だ。国民の期待が高い分、失敗は絶対に許されないんだ」と官邸主導の成果を強調する。

 

 今後、4月1日以降に65歳以上の高齢者向け接種を始めたいとする政府。だが、ワクチン争奪戦は世界規模で展開されており、その安定供給や、副反応など未経験のリスクも含めて課題は多い。河野氏も16日の会見で、「われわれも自治体もやったことがない大きなプロジェクト。必ず何かが起きる」「1から100まで計画がビシッとあるより、柔軟に対応できるほうが強い」と繰り返し、トラブル発生に予防線を張った。

 日本がスムーズに“集団免疫”獲得に進めるかは、政権の命運が懸かる東京五輪に向けた国民のムードに直結する。3月25日には聖火リレーがスタートし、その後、会場の観客をどうするかの判断を下す重大局面が来る。政府関係者は「万が一、ワクチンでつまずけば、五輪実現の機運はさらにしぼむ。『菅降ろし』の政局となりかねない」と話す。

 (一ノ宮史成、前田倫之)

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