『おっぱいバレー』北九州で青春喜劇、その約束に軟弱部員も激変

フクオカ☆シネマペディア(25)

 北九州フィルム・コミッションが誘致し、北九州市をロケ地に撮影された映画は数多い。劇映画「おっぱいバレー」(2009年、羽住英一郎監督)もその一つ。綾瀬はるか演じる中学校の教師が、異性への妄想ばかり膨らませ、ろくに練習しない男子バレーボール部員たちを鼓舞する先の弾みで「大会で1勝したら、おっぱいを見せる」と約束してしまう青春コメディーだ。

 1979年の北九州が舞台。戸畑三中(架空)の新任教師、寺嶋美香子(綾瀬)が顧問になった男子バレー部の部員たちは、異性への関心があふれんばかりである。深夜テレビのお色気番組の話題で盛り上がり、皆で見るためエロ雑誌を隠す。隣の女子の部室をのぞいては大騒ぎになる。

 なぜ、美香子は勝ったらおっぱいを見せる約束をする羽目になったのか。叱咤(しった)しても練習はだらだら。女子バレー部に完敗する情けなさが歯がゆくてならない。思い余って「本気で頑張ったら、何でもする」と口走り、部員たちに言質を取られ、なんとなく引くに引けなくなったのだ。部員たちの目の色がにわかに変わる。

 実は、美香子には苦い記憶がある。別の学校で受験前の女子生徒たちを「シーナ&ロケッツ」のライブに誘った。うわさをとがめた学校側から事実確認されると、「誘っていない」とうそをついて、生徒たちの不信を買った。トラウマだ。周囲の空気に流されやすく、いいかげんな面がある。おっぱいを見せる約束も即座に断ることができず、なんとなくそうなってしまったのである。

 美香子だって未熟さのある自分と闘っている。真っすぐに部員たちに向き合い、練習方法を学び、先頭に立って練習を引っ張る。部員たちは、周囲から軽蔑されながらも、根はいいやつらだ。いじめはしない。仲間を大事にする。思春期の妄想は自然なことで、飾らないだけだ。動機はどうあれ一生懸命練習し、力をつける。その中で、美香子も部員たちも人間として成長していく。

 ポップでドタバタ喜劇の味付けだ。部員たちが「おっぱい おっぱい」とランニングするのにはつい噴き出した。「ほんとに勝ったらどうしよう」という美香子のジレンマはおかしくて、キュートでもある。

 挿入歌はポジティブな昭和のヒット曲のオンパレード。心が沸き立つのは筆者の青春期と重なるからか。筑豊電鉄の萩原電停前(八幡西区)や、高台の富野台(小倉北区)から見下ろす工場群、酒店の角打ち(戸畑区)など、どこかレトロで味わい深い北九州の風景は、成長途上の先生と生徒たちを包み込み、見守るかのようだ。

 かつて映画「博多っ子純情」で異性への関心丸出しの中学生を演じた光石研(北九州市出身)が教頭先生を演じる。「(高村光太郎の詩集)『道程』が大好き」という美香子の新任あいさつにざわつく男子生徒たちを「おい、おまえら、静かにしろ」と制するのが、なんだかおかしかった。 (吉田昭一郎)

※「フクオカ☆シネマペディア」は毎週月曜の正午に更新しています

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