【動画】牧のうどん「やわめん」早出しの秘密

福岡を食べる

 博多ラーメンといえば、麺の硬さが選べるのは誰もが知るところ。より麺のゆで時間が長い、うどんでもお客さんの好みを聞く店がある。福岡県糸島市に本店を置く「釜揚げ牧のうどん」。故郷に戻った人たちがついつい食べたくなる「福岡のソウルフード」だ。ゆでるのに40分もかかる「やわめん」(軟らかい麺)を、なぜお客さんを待たせずに提供できるのか。

 ゆであがったうどんを釜から揚げ、冷水で締め、お客さんが来たら再加熱して丼に入れる-。これなら、すぐにでも出せるが、牧のうどんはそうしない。

 「麺の硬さを選べるうどん屋さん、ほかにないでしょうね」。麺をゆで続けて22年の統括店長、山田雅也さん(44)の言葉に誇りはあっても気負いはない。

 店内で釜と向き合うのは、「製麺者」と呼ばれる男性1人。「いらっしゃいませー」。お客さんが入ると、店員の誰よりも早く声を上げる。釜の前からでも駐車場の車の入りが分かるように、大きな窓が広がる店内。バス、ワゴン、セダン…。その乗員数を想定し、30分後の店内を思い描き、新たな麺を釜に入れるかどうかを瞬時に判断する。

 足りないと思えば、平たく伸ばしておいた生地を手早く機器に入れる。次々に麺の形に切り込まれ、ベルトコンベヤーで釜の熱湯に落ちていく。

 釜には、かご状の「バケット」が六つ入り、区分けされて麺がゆでられる。このバケットを入れ替えることで、製麺者からみて左から右に、ゆで時間が短い麺から長い麺が並ぶ。

 左から2番目のバケットが7、8分ゆでた「かためん」、左から5番目の約30分が「ちゅうめん」、左から6番目の約40分が「やわめん」だ。やわめんが残れば、すぐに水で締め、持ち帰り用のうどん玉にする。タイマーが数分おきに鳴るがあくまでも目安。大事なのは食感と触感だ。

 30分後の店内を予測しても、ぴたりと当たるわけでもない。「かためんが思ったより出た」「ちゅうめんが足りなくなりそう」。刻々と変化する状況を感じ取って常に先手を打つ。蛇口から釜に流れ落ちる水の量を調整して湯のたぎり具合を変え、仕上げ時間を縮めることもある。

 かつて、こだわりの製麺者の間で言い争いも起きたという。「これは、ちゅうめんだ」「いいや、やわめん」。若い職人がお客さんから「これは、やわめんじゃなかっ」と20分説教されることもあった。

 それでも創業から半世紀近く、このスタイルを変えることはない。これほど手間がかかるのに、なぜ麺の硬さを選べるようにしたのだろう-。 (入江剛史)

    ◇   ◇ 

 「福岡は食べ物、うまいよねぇ」。県外出身の人たちから、そんなことを言われると、素直にうれしい。ただ、店の起こりやこだわりを聞かれると、実はよく知らない。せっかくなので「うんちく」の一つでも語りたい。ならば福岡の食を、その裏側まで食べ尽くしてしまおう。 =次回は27日掲載予定

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