【動画】北朝鮮出稼ぎ6万人、中朝国境で制裁逃れ横行

 その男性は韓国ソウル郊外のカフェに1人で現れた。北朝鮮出身の40代。中国各地のブローカーとパイプを持ち、北朝鮮労働者の中国派遣に関わる人物だ。

 「中国では今も多くの北朝鮮人が働いている」。国連安全保障理事会は2017年、北朝鮮の核・ミサイル開発への制裁決議で北朝鮮労働者の受け入れを禁止。19年12月までに全員を本国に送還するよう加盟国に求めた。しかし、男性は「丹東(中国遼寧省)だけで約5万8千人はいる。20~30代の工場作業員が中心だ」と明かした。オンライン通話でブローカーに確認しながら語った内容は細部にわたった。

 男性によると、丹東の北朝鮮労働者たちは、工場内の寮などでひそかに集団生活を送っている。制裁違反が露見しないよう、外部の目を避けるためだ。労働者は衣料品やアクセサリー、かばんの製造、農水産品加工などに携わり、40代以上は主に北朝鮮人の管理者という。衣食住は提供されるものの、外出は禁止。「中国のテレビ番組は視聴できるが、インターネットや電話を使うことは許されない」(ブローカー)

 北朝鮮当局は労働者が脱北しないよう思想調査をした上で、派遣の可否を決める。派遣先の工場の逃走防止措置が十分かどうかも事前に確認。派遣労働者の情報は北朝鮮にある中国大使館も管理しているという。

 昨年1月、中国で新型コロナウイルス感染が急増すると、北朝鮮は中朝国境を封鎖。中国に労働者を送れなくなり、就労契約期間を過ぎた労働者も自動延長の形で働いている。

 北朝鮮労働者の受け入れは明らかな制裁決議違反だ。黙認している中国当局も国際社会の批判は免れない。指摘すると、朝鮮労働党幹部と直接やりとりできるという中国人ブローカーは、画面の向こうで苦笑いを浮かべた。「中朝両政府とも全て承知の上だ」。そう言うと、両政府が労働者の派遣や出入国に深く関与する実態を語り出した。 (ソウル池田郷、北京・坂本信博)

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