カネミ油症調査 次世代の被害掘り起こせ

 遅きに失したとの批判は免れないが、被害者の全員救済に向けた第一歩としたい。

 福岡、長崎両県など西日本を中心に広がった国内最大級の食品公害「カネミ油症」を巡り、国が認定患者の子ら次世代への影響を調査することを決めた。

 被害者側が強く求めていたことだ。既に油症発覚から半世紀が過ぎている。迅速に調査を進めて、若い世代の被害者を掘り起こし、「疑わしきは救済する」との方針で臨むべきだ。

 これまでの調査は認定患者に限られていた。2012年の被害者救済法成立を受け、被害が社会で表面化した1968年時点で認定患者と同居していた家族も、一定の症状があれば患者と見なすようになった。

 ただ69年以降に生まれた人などについては、原因物質であるダイオキシン類の血中濃度などの認定基準が厳しい。偏見や差別を恐れて、油症の疑いを表に出せない人も少なくない。

 こうしたことを背景に、累計の認定患者2350人(昨年末時点)のうち、次世代は50人ほどにとどまっている。

 カネミ油症の症状である頭痛や重い皮膚症状、爪の変形などを訴えた人は全体で約1万4千人に上る。油症は母親を介して胎児も発症するとされる。次世代の被害は強く懸念される。

 被害者の全員救済には、被害実態の把握が欠かせない。

 救済法は患者と家族の「人権尊重」をうたい、必要な医療を受けるための支援金などを認定患者に支給している。

 一方で、根治する治療法は依然見つかっていない。加えて、認定患者には心肥大や糖尿病などが一般成人より1・5~3倍も多く発症した、というデータもある。若い世代の将来への不安も早急に取り除く手だてを講じる必要がある。

 厚生労働省によると、次世代を対象にした調査は医師らでつくる全国油症治療研究班(事務局・九州大)が実施する。調査対象や手法、時期など具体的な内容は今後詰めるという。

 被害者はかつて、カネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を使った天ぷらなどの料理を食べた人々である。油の製造工程でポリ塩化ビフェニール(PCB)などが混入し、そのPCBが熱で猛毒のダイオキシン類に変化していたのが原因だった。

 認定患者の親から生まれ、30代となった今も倦怠(けんたい)感や鼻血、吹き出物などの症状が続く人々がいる。にもかかわらず油症患者の基準には満たず、国からの支援も受けられない。

 何の落ち度もない人々が苦しんでいる。食卓のだんらんが突如として悲劇に変わった不条理を、放置してはならない。

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