「逃げ出したくなりました」再出発目前、手紙残し

 「以前働いていたコンビニへ行って、また雇ってくれないか頼んでみます」

 福岡市内の福祉施設から女性(31)が姿を消したのは昨年11月10日だった。ベッドとわずかな家電が置かれた6畳の部屋に、1通の手紙を残して-。

「うちで働きませんか」

 女性は同年2月、コロナ禍でうどん店を解雇され、夜逃げ同然でアパートを出た。「食べ物をください」。福岡市・天神の警固公園でこう書いた紙を携え寝泊まりするようになった。

 「もう無理」。困窮の末、8月にカッターナイフを手に宝石店で現金を脅し取ろうとして逮捕。10月21日に執行猶予付き判決を受け、その日から福祉施設に入った。

 女性の裁判は新聞で大きく報じられた。「うちで働きませんか」。記事を見た福岡市内の飲食店などから、事件を担当した弁護士に連絡があった。女性は非行少年の更生を支援するそば店で働くと決め、11月8日に1人で店を訪れた。再出発は目前のはずだった。

 女性は翌9日、そば店の店主(76)から交通費として渡されていた3万円を施設の職員に預ける。10日朝には「相談がある」と胸の内を明かした。

 女性 福祉が必要な人間と思われているようで嫌でたまらない。逃げ出したい。

 職員 そんなふうに思ってない。みんな制度の説明をしただけだと思うよ。

 就職や住居が決まっても暮らしがすぐに安定するとは限らない。生活保護など福祉制度を利用するよう勧める周囲の声が、逆に重荷になったのか。職員が電話をかけるため席を外した約5分の間に姿が見えなくなった。

「支えられることは、恥ずかしくない」

 店主は「失踪した」との連絡を受け、定休日に施設があると聞いていた地域を探し回った。「生まれると同時に親から捨てられた」。淡々と話した女性はなぜ、差し伸べられる手を振りほどき、孤独で厳しい道を選んだのだろうか。

 「人から支えられることは決して恥ずかしくはない、と分かってほしい」。店主は女性からの連絡を待っている。

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