ホークス新設「R&D」の実態は

 「R&D」という言葉を目にすることが多くなった。リサーチ・アンド・ディベロップメントの略で「研究開発」のこと。メーカーやIT企業を中心に多くの分野に広がりつつある。プロ野球チームも例外ではない。3軍制を積極活用した選手育成など、多面的にチーム強化を進める福岡ソフトバンクが昨年設置した「R&D担当」の実態を探った。

バットに機器、動作解析

 今回の宮崎春季キャンプ途中からA組(1軍)練習メニューに「R&D」が設けられ、選手が各日数人ずつ参加している。体にセンサーを装着。野手はバットのグリップエンドにも機器を取り付け、スイングを繰り返した。得られたデータを基に動作解析を行っているのが城所収二R&D担当(35)だ。

 元高校球児。中京大でバイオメカニクスの道に進み、早大大学院でスポーツ科学博士に。国立スポーツ科学センターを経て昨年、球団入りした。OBで元外野手の城所龍磨氏と親戚関係はないが、同学年で出身市も愛知県内の隣同士。「入団当初、名字で知ってもらいやすかった」と笑う。

 R&D担当は2020年、球団の「チーム戦略室」に設けられた。球団運営の核となる「球団統括本部」の中に「編成育成本部」「チーム運営部」とともにある部署。情報管理システムの運用や改善、新システムの調査、導入、スコアラーやトレーナーの編成も行う。

バイオメカニクスの人材探し

 設置のきっかけは19年の秋季キャンプ。米大リーグの選手らが利用し、日本でも浸透しつつあった米トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」のスタッフを招き、動作解析をしてもらったことで動きだした。

 現場も球団も必要性を感じ、チーム戦略室の須山晃次室長(43)は「球団内で人材を抱えてやれるのでは、という発想になった」と言う。そこでバイオメカニクス、データサイエンスの人材を探した。

 測定機器や分析システムが増え、採れるデータも増えたが、適切に読み取り、活用できなければ効果は乏しい。昨年、福岡県筑後市のファーム施設で始動した城所担当も、現場にどんなデータを提供するか「かなり考えた」と言う。

 専門的な数値は、身近な数字に置き換え、グラフなどビジュアル化もした。ハイスピードカメラの映像も組み合わせ、視覚的な分かりやすさも追究。最初の1、2カ月はフィードバック内容の吟味に費やしたそうだ。

AI、ITを奨励する球団の土壌

 R&D担当は今年1人増えて2人になったが、フィードバックには数週間が必要。時短は課題で、球団の親会社お家芸の人工知能(AI)活用も今後のテーマだ。現在、動作解析は練習中に限るが、近年は映像からAIで動作解析する技術も発達した。引き続き筑後を活動拠点に、今年は選手の計測を定期化。並行して1軍本拠地ペイペイドームでの計測環境も整備する。新システムの導入も検討中だ。

 プレー映像やデータを携帯端末のアプリを使ってチーム内で共有するなど、IT技術をチーム強化に役立ててきたソフトバンク。新たな取り組み、特にIT関連を奨励する球団の土壌もある。DeNAや楽天をはじめ、他球団も力を入れている分野だが、城所担当は「ホークスでやっていることが他球団に波及していくぐらい先頭を切っていかないと」と力を込めた。

(森 淳)

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