数万人デモ、今や数百人…タイの若者なぜ冷めた

 【バンコク川合秀紀】昨年は数万人規模に及んだタイの反体制デモが1月下旬から今月にかけ再開したものの、参加者はいずれも数百人から千人程度にとどまる。政権批判に加え異例の王室批判も展開し、若者たちを引きつけた熱気がここに来て急速に冷めつつある理由を探った。

 20日午後、主要な学生団体が「大規模な参加」を呼びかけたデモがバンコクの国会前で開かれた。当日朝、野党が提出したプラユット首相ら閣僚の不信任案が否決。週末でもあり多数の参加が見込まれたが、集まったのは千人程度。女性のリーダーは「参加を怖がる人が増えているのかもしれない」と漏らした。

 デモに参加しなくなった人たちに理由を聞くと「怖さ」は複数ある。一つ目は、王室批判を禁じる不敬罪の摘発を当局が約2年ぶりに復活させたことだ。昨年11月以降、不敬容疑で出頭を命じられたのは計60人近くに及び、このうち4人を今月起訴に踏み切った。

 20日、国会近くの商業施設にいた高校3年トップさん(17)は昨年11月の国会前デモには行ったが、この日はやめた。「自分も不敬容疑で拘束されるかもしれない」。複数回デモに参加したことがある大学3年ピムさん(21)も「不敬罪の報道を見て声を上げない方がいいと感じてしまった。脅しに負けるようで悔しいけど…」と声を落とした。

 別の「怖さ」はデモ現場での衝突。当局や王室支持派との衝突が相次ぎ、負傷者も増加。資材販売会社経営のリッチさん(31)は「デモ隊の一部が平和的じゃなくなった」ことを不参加に転じた理由に挙げる。目立った成果がない不満が高まり、統制が取りにくくなっているのは事実。13日、王宮近くへのデモ行進では主催者が解散を告げても「中途半端に終わるな」などの声がデモ隊から上がり、一部が石や爆竹を投げつけて当局と衝突。20人以上が負傷した。

 リッチさんは「気持ちが冷めた」背景に、隣国ミャンマー全土で続くクーデター抗議デモとの違いも指摘した。「軍の支配で生活が一変するミャンマー人の本気さに比べ、タイは政権退陣や汚職批判、王室改革など主張がバラバラで生活から遠い。多くのタイ人が、自分たちの弱さに気づいてしまった」。不敬罪で起訴された男性リーダーも勾留直前、会員制交流サイト(SNS)に「ミャンマーに比べタイのデモは子供っぽく、全力で闘っていない」と投稿した。

 23日夜にも都心部交差点で警察幹部人事を巡る汚職疑惑に抗議するデモが計画される。女性リーダーは「国民の不満は収まっていない」とした上で「デモを激しくすれば平和的じゃないし、静かにしすぎると訴える力が弱くなる。バランスが難しい」とぼやいた。

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