「蓄えで生活している」福岡の伝統芸能、エンタメも我慢の時

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響は、福岡の伝統芸能や興行の世界にも広がっている。宴会などで日本舞踊や唄を披露する芸妓(げいぎ)は仕事が消え、国内外から観客を集めていたショーは中止が続く。福岡県などは今月末で宣言解除の見通しとなったが、感染拡大前の日常が戻るかは不透明。「このままでは文化が衰退してしまう」。関係者は危機感を募らせる。

 「もっと粋に手を動かして」。今月中旬、芸妓の紹介や派遣を担う事務所「博多券番」(福岡市博多区)。ベテラン芸妓こまこさんが若手3人に踊りを指導していた。「仕事がない今は若い子にみっちり稽古する時です」

 コロナ禍で芸妓が派遣される企業や団体の宴会は例年の1割まで減った。こまこさんの仕事も昨夏以降はほぼゼロ。年が明けて7、8件の予約が入って安心したが、2度目の緊急事態宣言で全てキャンセルになった。

 芸妓は芸を披露し、花代(出演料)をもらう。お座敷がなければほとんど収入はない。副業は禁止され、営業時間を短縮した飲食店のように協力金もない。こまこさんは「皆、蓄えで生活している」と明かしつつ、芸妓文化の今後を心配する。「解除後もしばらくお座敷は元に戻らないでしょう。若い子が経験を積む場がないと、伝統芸能の灯が消えてしまわないか」

 華やかなショーとダンスが魅力の「劇団あんみつ姫」は宣言を機に、同市中央区の専用劇場を閉め、自主休業を続けている。宣言期間中、劇場や映画館は夜8時までに営業を終えるよう協力を求められており、解除後も時短を働き掛けられれば休業は継続するという。運営会社の石川鉄也社長は「制約がある中で、お客さまに『安心して楽しんで』とは言えない」。

 劇団員を含め社員は18人。雇用維持などで借金は膨らむばかりだ。石川社長は「感染収束を願う気持ちと、ショー再開で収入を得たい思いで揺れている。そもそも幕を開けなければ、離れていく演者やスタッフもいるかもしれない」と憂える。

 歌舞伎や演劇などを上演する「博多座」(同市博多区)は、終演時間を午後8時に繰り上げている。宣言解除後も当面継続する。興行収入はコロナ前と比べ約9割減。国の補助金に頼りたいが、公演の海外配信に取り組むといった条件がある。井上孝和総務部長は「動画配信にも経費がかかる。経営に対する直接的な支援の方がありがたいのだが…」と肩を落とす。

 ただ、50%に抑えている観客収容率は解除後、演者側の了解が得られればすぐにでも100%に戻したいという。「エンターテインメントは心の潤い。こんな時こそ、感染対策をしながら楽しんでほしい」

 (竹中謙輔、井崎圭)

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