提灯店主が半生かけて収集 中国の古陶磁を福岡市美術館で初公開

 福岡市博多区上川端町の老舗提灯(ちょうちん)店の前店主、故門田敏郎さんが半生をかけて収集した中国の陶磁器が市美術館(中央区大濠公園)で初公開されている。収集品は趣味の域を超えた名品ぞろい。新石器時代の土器から漢、唐、宋、元、明、清時代までの陶磁器を網羅する。2016年に84歳で亡くなる直前に寄託を受けた美術館が「門田コレクション」と命名し、約150点を展示している。4月11日まで。

 門田さんが収集を始めたのは30代後半の昭和40年代から。近くにあった玉屋デパートに常設展示された「田中丸コレクション」がきっかけだった。九州各地の名窯の古陶磁をまんべんなくそろえた収集品に触発され、中国陶磁を時代ごとに集めるようになった。

 門田さんの長男で現店主の明寛さん(59)は、自宅の応接間が陶磁器に囲まれてゆくのを見てきた。「おやじからは収集品の自慢話をさんざん聞かされましたが、それほどの物とは正直、思わんやったですね」

 コレクション展には後漢時代(1~3世紀)の倉をかたどった副葬品、唐時代(8世紀)の彩陶・唐三彩の枕、北宋時代(12世紀)に景徳鎮窯で焼かれた青白磁の鉢などが並ぶ。

 美術館の後藤恒(ひさし)主任学芸主事は「国内であまり目にしない品も多く、中国陶磁史を通観する充実したコレクションに驚きました」。

 生前の敏郎さんはルーペや顕微鏡を使って陶磁器の細部も観察し、鑑識眼を養った。「自分が職人だけに、作陶の過程に興味があったのでは」と明寛さん。古陶磁の研究もコレクションと並ぶ、敏郎さんのライフワークだった。唐津焼の十三代、十四代中里太郎右衛門父子とも親交を結び、中国へも頻繁に足を運んだ。

 12年には宋時代の名窯で窯跡が不明の「哥窯(かよう)」の所在地を、現地調査と陶片の顕微鏡調査で推定した論考が学術雑誌に掲載された。後藤主事は「市民研究家の考察が学術誌に載るのは異例のこと」と評価する。

 コレクションの寄託を受け、後藤主事が敏郎さんに会ったのは死去の3週間前。病床でしっかりと手を握られたという。「収集品を多くの人に見て楽しんでほしいとの思いを、美術館に託されたのでしょう」

 「中国陶磁の収集、研究家としてのおやじを今回は見直しました」。コレクション展に足を運んだ明寛さんは、来館者たちの笑顔に敏郎さんの笑顔を重ねた。

 「おやじがおったら『見てんやい、言うた通り(の名品)やろうが』と自慢しよりますね」。父親の気質を「のぼせもん」と言う明寛さん。「おやじは山笠(やま)だけでなく、陶磁器にものぼせとりました。望み通りに立派に展示してもろうて、あの世で喜んどるでしょう」と話した。 (手嶋秀剛)

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