マスクを着け忘れた

 慌ててバスに乗ったら、皆が一斉に私を見た。冷たい視線の先は口元。「あっ、マスク! 忘れてた」。コロナ禍のミスを恥じ、大急ぎで取り出した。集団の強い圧に驚いた。昨年秋のことだ。

 その直後「息苦しさを忘れる特別な日を」との思いで、福岡市で今年5月にある竹内まりやさんのコンサートを申し込んだ。彼女の7年ぶりの全国ツアーは入場時間を座席ごとに定め、歓声禁止など感染対策を徹底。だが、緊急事態宣言が再び出た先月、「中止」メールが届いた。

 落胆する中、彼女が作詞作曲した「キミの笑顔」の動画が今月、ネット上で公開された。広末涼子さんの歌声に合わせ、長期入院する少女と家族を描いたアニメ映像が流れる。不安を抱え、涙ぐむ少女。しかし家族の意外な“行動”を見て思わず笑いだす。誘われて周囲もほほ笑む内容だ。心が晴れぬ時、口ずさむ。マスクを着けず暮らせる日を願いながら。 (永野稔一)

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