緊急事態の解除 警戒はまだ緩められない

 市民の感染への警戒が緩んでしまわないか。不安が募る。

 政府は新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づき10都府県に出している緊急事態宣言について、首都圏を除く福岡県など6府県は3月7日の宣言期限を待たず、2月末で解除することを決めた。

 新規感染者数は全国的に減少傾向で、感染状況を判断する指標も全般に改善してきた。とはいえ、宣言が出された都府県の病床使用率は依然として高い水準にあり、医療現場には重い負担がのし掛かっている。

 特に福岡県の病床使用率はとても安心できるレベルには下がっていない。「感染者数の減少に伴い医療提供体制も改善していく」との意見があるが、希望的な観測ではなかろうか。

 これから歓送迎会や花見といった会食の機会が増え、卒業行など人の移動が活発になる季節を迎える。6府県は解除を機に、逆に警戒を強めるべきだ。感染対策の徹底を呼び掛け、医療提供体制をさらに拡充する努力を続ける必要がある。

 宣言を解除された府県では、飲食店などに対する時短営業の要請は継続される。福岡県は現在の午後8時から、同9時までに緩和する方針という。

 会食の場では飛沫(ひまつ)感染のリスクが高くなる。営業の条件を段階的に緩和する措置はやむを得まい。ただ飲食業界にはこれまでの規制による打撃も蓄積している。実情を把握し、要請に応じた店には財政的支援の積み増しも検討すべきではないか。

 注意したいのは、厚生労働省の専門家組織が感染者数の減少スピードの鈍化を指摘している点だ。各地の高齢者施設ではクラスター(感染者集団)も相次いで確認されている。

 夜間に出歩く人が再び増えた地域があり、飲食店の時短営業でも感染者が減りにくくなったとも指摘している。感染力が強いとされる変異株の確認も増えた。専門家組織は宣言解除後も感染状況を示す数値をさらに引き下げる取り組みの必要性を強調している。国も自治体も重く受け止めてほしい。

 昨年夏の感染第2波は感染者が減少に転じた後も500人規模の新規確認が続き、秋以降に大きな第3波へつながった。政府はこの間、観光支援事業「Go To トラベル」を継続した。これが感染拡大の一因となったとの指摘も根強い。

 専門家は今回も、感染者が再び増加に転じるリバウンドに警鐘を鳴らしている。政府は状況の変化を慎重に見極めつつ、わずかでも増加の兆しがあれば、第4波を防ぐために躊躇(ちゅうちょ)なく特措法に基づく感染拡大防止策を打ち出すべきだ。

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