懸念押し切り「福岡解除」 首相、最後まで迷い

 政府は26日、新型コロナウイルス緊急事態宣言について6府県の前倒し解除を決めたが、ぎりぎりまで悩んだのが福岡県の扱いだった。病床使用率の高止まりに懸念を示す専門家を押し切るかどうか。菅義偉首相の最終判断は26日午前までずれ込んだ。

 そもそも首相は「1カ月後には必ず改善させる」と呼び掛けて緊急事態宣言を発出し、早期解除を目指した。だが新規感染者数が減少傾向に転じても医療提供体制が改善せず、ずるずると時間が過ぎた。

 2月後半になると、首都圏以外の病床逼迫(ひっぱく)は目に見えて改善。政府の意向を代弁するかのように、関西などの知事たちが宣言の前倒し解除を視野に動きだした。

 その潮流に取り残されたのが福岡だった。病床逼迫度のバロメーターとなる「最大確保病床占有率」は21日時点で52%。宣言解除の絶対条件であるステージ4(爆発的感染拡大)の基準の50%を超え、20~40%台に下がった他の5府県との差が際立った。

 首相周辺によると、政府はこの間、水面下で福岡県に病床確保策の説明を求めるなどして改善を促したが、大きく好転する見通しは立たなかった。「地元の要請は尊重するのが政権の考えだが、福岡だけは判断がつかなかった」。政府高官は、この時点での首相の胸中を代弁する。

 首相は25日夕、西村康稔経済再生担当相を官邸に呼び、関西など5府県の解除を諮問委員会に提案するよう指示。関係者によると、福岡については解除に前向きな意向を示す一方で、複数の専門家と県内の病床の改善見通しなどを協議するよう命じた。

 これを受け、内閣官房は諮問委のメンバーらと26日未明まで検討した。「病床が改善しきっていない」と反対する専門家が多く、感染症対策分科会の尾身茂会長は、諮問委が福岡だけ解除を認めない可能性を示唆したという。

 ただ、首相はこの時点で「首都圏以外の一括解除で政府のコロナ対策をアピールしたい」とも考えていたといい、内閣官房は尾身氏らを説得。専門家らの懸念を押し切った。首相が福岡の解除を決めたのは、こうした報告を聞いた26日朝だった。

 26日夜、官邸で記者団の取材に応じた首相は、福岡の解除理由を問われ「妥当だと思う」と即答。「(新規感染)人数は減少している。そこは事実だ。病床(使用率)についても減少し、(解除の)基準は満たしている」と述べた。

 尾身氏は同日夜の記者会見で、諮問委の議論を振り返り「もろ手を挙げての賛成ではなかった」と明かした。首相の判断が正しかったのかどうか。見切り発車のリスクは消えない。(東京支社取材班)

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