マンボウが政権の吉兆占う?いまや官邸の共通語

東京ウオッチ

 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は福岡など6府県で、28日をもって先行解除された。この1カ月、宣言解除の可否を探る首相官邸担当の記者たちの間で流行語となったのは間違いなく、「マンボウ」だろう。菅義偉首相をはじめ官邸スタッフ、新型コロナ担当官僚の間でも飛び交っている言葉だが、大きな体で優雅に泳ぐ魚のことではもちろんない。ウイルスの“第4波”を抑止し、夏の東京五輪・パラリンピックをたぐり寄せる切り札ともなり得る「マンボウ」とは――。(前田倫之)

 「マンボウの実効性を担保できるのか」「福岡はマンボウになりそうか」…。2月は連日、こんな非公式のやりとりが首相周辺と記者団の間で交わされた。

 「マンボウ」とは、2月13日施行の改正新型コロナウイルス特別措置法で導入された「まん止等重点措置」の略称である。感染状況が緊急事態宣言に至る前の段階で、地域と業種の対象を絞り込んで局所的・重点的に対策を打てるようにし、感染拡大を食い止める措置。具体的には、首相が都道府県を決め、知事が市区町村などを指定し、特定業種に営業時間短縮などの要請、命令を出せる。命令に違反した場合、行政罰として20万円以下の過料が科される。

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 生まれたばかりの造語であり、まだ実際に措置が適用された事例もないものの「マンボウ」はさらに、「のぼりマンボウ」「くだりマンボウ」の2パターンに分類される。ちなみに、読み方は「上がり」と「下がり」のマンボウ説もある。

 もともとは、緊急事態にならないように先手を打って対策できるようにする「上り」の仕組みが基本だった。一方の「下り」。緊急事態宣言を解除した後も、全ての規制を一気にフリーにしてしまうのではなく、一定の感染抑止策を継続できる激変緩和的な仕組みと言える。今回、福岡県の宣言を外す際にも取り沙汰されていた。

 ただ、官邸サイドの相場観は「『下りマンボウ』にするぐらいなら宣言をそのまま継続して、新規感染者数を最低レベルまで落としきった方が望ましい」(政府高官)というもの。今後、仮に「マンボウ」を適用する場合は、宣言解除後のウイルス感染のリバウンドを防ぐため、局所的に講じる「上り」が現実的とみられている。

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 菅政権にとって、消長を左右する東京五輪・パラリンピックの重要局面が日一日と近づいてくる。3度目の緊急事態宣言を発出せずに東京大会の実現にこぎ着ける上で、経済へのダメージを限定的にしつつ、感染抑止に取り組める「マンボウ」は使い勝手がいいだろう。

 とはいえ、かわいらしい語感とは裏腹に厳しい私権制限を伴うのが「マンボウ」の現実。適用する際、事前の国会報告は必ずしも求められておらず、的な運用の懸念も拭えない。「マンボウで局所的に対策を講じても、別の場所にウイルスがしみ出す可能性が残る」との課題もあり、現場で実務を担うことになる自治体サイドも手探り状態が続く。

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 新型コロナを巡っては、江戸時代から伝わる疫病退散の妖怪「アマビエ」が「現代用語の基礎知識選 2020ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに選ばれた。

 偶然だろうか、「マンボウ」にも疫病に関わる伝承がいくつかあるそうだ。瀬戸内海の一部地域では、釣れると疫病がはやるとして忌避されていたこともあるとされる一方、和歌山では豊漁をもたらす七福神のえびす様のようなおめでたい存在として扱われ、江戸時代に疫病退散を願って描かれたマンボウの木版画が残っているという。

 3月7日まで、緊急事態宣言は首都圏の1都3県で継続される。いずれまた、その可否の議論がゆらゆら浮かび上がってくるであろう「マンボウ」。今はまだ、オフレコという海中の世界にじっと息を潜めているが、菅政権にとって国民にとって吉と出るか、はたまた凶と出るか。

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