昭和基地で聞いたウイルスの話

 20年ほど前の体験談。オーストラリア西岸の港町、フリマントルで日本の南極観測船「しらせ」に同行記者として乗り込み、観測拠点の昭和基地へ向かった。この間、1カ月の船内生活。船を操る自衛隊員を含め二百数十人が過ごす密な空間で風邪がはやった。「しらせ風邪」だ。

 真っ白な氷海を抜け、基地に着く。第1次隊が派遣された1956年以来、一時期の空白を挟み、現在も約30人の研究者らが越冬して大気やオーロラの定点観測を継続。しらせで到着の交代要員が合流したときに基地内ではやるのは「昭和風邪」と呼ばれた。

 複数の越冬歴を誇るベテランが「一定のウイルスに順応しているところに別のウイルスが持ち込まれると、免疫がないためまん延する」と解説してくれた。当時はいぶかしんだが、新型コロナ感染防止に渡航や移動制限が有効であると知った今、経験に裏打ちされた的を射る指摘だったと深くうなずく。 (重川英介)

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