被災地の再生 「三つの逆風」乗り越えて

 東日本大震災はまさに現在進行形である。被災地は先日、福島沖を震源とする最大震度6強の余震に見舞われた。地震活動の継続だけでなく、この組織が存続すること自体も、終わらぬ苦境を物語っていよう。

 復興庁-。被災地再生事業の司令塔とされる首相直轄の機関だ。政府は2020年度で廃止する方針を転換し、30年度までの10年間、設置を延長した。

 同庁幹部はその役割を「二つの風との闘い」と形容する。震災の記憶と教訓が薄れゆく「風化」と、原子力災害がもたらした根強い「風評」のことだ。

 本来なら昨年、東京で「復興五輪」が開催され、被災地への注目度も大きく上がるはずだった。それが新型コロナウイルス禍で一変、世の関心は感染対策に集まり、今夏の五輪開催も危ぶまれている。この状況も復興への逆風と捉えるなら、風は三つ吹いていることになる。

 11年3月の大震災を受け、国は15年度までを「集中復興期間」、16~20年度を「復興・創生期間」とし、10年で事業を終える計画だった。復興庁が存続された最大の要因は、福島の原発事故処理の遅滞である。

 国は21年度以降を「第2期復興・創生期間」と位置付け、主に地震、津波の被害を受けた宮城、岩手両県では「復興の総仕上げを進める」としている。両県では住宅の高台移転や公営住宅の整備、地元産業の再生などが比較的順調に進んできた。

 これに比べて福島は「中長期的な対応が必要」とし、復興のめども示されていない。原発の廃炉や放射性廃棄物の最終処分のめどは立たず、避難住民の帰還や農漁業の再生も遅れているからだ。政府の調査では、福島県産品の価格は全国平均より低いものが目立つなど、風評被害は依然続いている。

 21年度の復興関連予算案(9318億円)にも、風評被害に苦しむ事業者の支援、移住の促進、農地の再生などを図る新規施策が盛り込まれ、福島関連事業費が全体の7割を占める。

 一方、宮城、岩手を含めた被災地全体では、別の課題も横たわっている。長期避難生活者のケアや新たな地域コミュニティーづくり、生きがいの創出といった「心の復興」だ。被災地の再生はなお途上にあることを私たちは再認識しておきたい。

 全世界から被災地に寄せられた支援に感謝し、復興の後押しにつなげる-東京五輪の誘致で掲げられたこの理念は、先の五輪組織委員会会長の交代劇で失われたわけではない。「3・11」が平和の祭典の原点であることも改めて想起したい。

PR

社説 アクセスランキング

PR