新たな旅「e観光」 街歩き配信、特産品ズーム会食

 新型コロナウイルス禍で行がしづらい状況が続く中、九州でも「オンライン観光」の取り組みが広がりつつある。打撃を受けた旅行業者などが主体となり、オンラインでも観光地の雰囲気や、現地の人とのコミュニケーションを楽しめるよう工夫を凝らしている。コロナ下の一時的な取り組みではなく、新たな旅のスタイルとして確立しようとする動きもある。

eスポーツのように新たな分野に

 「ハモしゃぶ、いただきまーす」。北海道や関東など各地に暮らす参加者約20人が、熊本県南部の津奈木町の漁師夫妻とビデオ会議システム「ズーム」でつながり、夫妻が捕ったハモのしゃぶしゃぶを一斉に口にした。

 旅行企画会社グローカルプロジェクト(福岡市)が2月28日に実施したオンライン観光の一幕だ。1時間半で参加費5千円(食材込み)。参加者宅には事前に冷凍のハモやマダイのセットが届く。当日はズームでさばき方や調理法などが紹介され、自宅で調理。参加者からはチャットでさまざまなコメントが寄せられ、夫妻らが丁寧に答えた。

熊本県津奈木町のオンラインツアーで、うろこの取り方を説明する​​​​​様子=2月28日(画面の一部を加工しています)

 同社は昨年8月にオンライン観光を初開催し、これまでに「稲刈り」などをテーマに約20回実施した。コロナ禍で旅行需要が激減する中、新たな取り組みとしてオンライン観光の手法を模索。「地元の人との接点」や「食」を重視するスタイルに行き着いた。参加者に調理などを体験してもらうのもポイントだ。

 同社には社員旅行や子供会の旅行をオンラインで企画してほしいという依頼も来るようになり、河崎靖伸社長は「eスポーツがスポーツの一つの分野となってきたように、オンライン観光も新たな分野として盛り上がっていく」とみる。

外国人客向けに英語ガイド

 海外向けの取り組みもある。九州電力が九州の自治体などと設立した「九州観光促進コンソーシアム」と「九州通訳・翻訳者・ガイド協会」は、ビデオ会議システムを使ったオンラインツアーを実施している。

 「これは毎年夏に開かれる伝統行事で、地元の人が大切にしている祭りです」。熊本県山鹿市の工芸品「山鹿灯籠」を頭に乗せ、優雅に踊る女性たちの映像が流れると、通訳案内士が英語で解説。外国人客などに向けて、市内にある芝居小屋「八千代座」や名産品の魅力も紹介した。

 ツアーは今年1月から福岡県朝倉市や太宰府市で実施し、山鹿市で5カ所目。九電は「九州のファンを増やし、新型コロナが落ち着いた後に訪日外国人客を誘客したい」と意気込む。

2ヵ月で26回のライブ配信

 カナダ出身で福岡在住30年のニック・サーズさんは「キュウシュウ・ライブ」と題し、英語で案内しながら街を歩く様子を動画投稿サイトユーチューブ」でライブ配信している。雪の日の福岡城跡など、一つのエリアを1時間以上かけて巡り、自身の知識やその街に詳しいゲストの解説を交えて魅力を伝えている。

 今年の元日に始め、2カ月で26回のライブ配信を実施。主な視聴者は九州での旅行や滞在経験がある世界各地の人で、毎回リアルタイムで見ている人もいる。サーズさんは「九州のファンが九州とつながれる方法をつくりたい」と語る。

 サーズさんが編集長として1998年から毎月発行してきた外国人向けの地域情報誌「フクオカ・ナウ」は、コロナ禍で昨年4月を最後に発行を休止。ライブ配信は今後も続けて一覧できる動画を蓄積し、自治体などのPRとして配信を請け負うなど事業として成長させる方針だ。

子育て、介護中にもニーズ

 トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)の工場見学、酒蔵見学などをオンラインで実施する動きもある。

 福岡県福津市のふくつ観光協会は、「光の道」で知られる宮地嶽神社の正式参拝などができるオンラインバスツアーを開催している。中村留美事務局長は「子育てや介護などでコロナに関係なく旅行ができない人や、住む場所が離れ離れになってもオンラインなら集まれるというケースがあることに気付かされた。一つの旅の形として今後も活用したい」と言う。

 ただ、自治体などの観光プロモーションを手掛けるエスビージャパン(佐賀県基山町)の中村健太郎企画部長は「九州の動きは首都圏などと比べて低調」と指摘。「オンライン観光で見た商品をすぐに購入できるようにするなど、売り上げにつなげるための知恵を出す必要もある」と話した。

 コロナ収束後も訪日客などの回復には時間がかかるとみられており、オンラインの活用に向けた事業者の試行錯誤は続きそうだ。

 (仲山美葵、山本諒)

■オンライン観光特化の動きも

 観光プロモーションの企画運営を手掛けるエスビージャパン(佐賀県基山町)は4月中旬にも、オンライン観光に特化したウェブサイト「オンジャーニー」を立ち上げる。さまざまな団体の観光商品を掲載し、集客や販売をする。

 サイトは日本語と英語に対応し、予約や決済機能を付ける。各地の観光協会などに掲載を呼び掛け、常時200商品が並ぶ状態を目指す。手数料は参加費の20%。主催者側の要望に応じて20カ国語への随時通訳の調整、オンライン観光の台本作りなども請け負う。

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)などもサイト内にオンライン観光商品のコーナーを作るなど同様の動きが広がりつつある。

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