予算衆院通過 接待疑惑は残ったままだ

 どこか釈然としない。新型コロナウイルス対策の遅れが皮肉にも予算の成立を急がせ、重要な不祥事の解明は取り残された-。そんな印象が拭えない。

 2021年度政府予算案がきのう、衆院を通過した。憲法が定める衆院の優越規定により年度内の成立が確実になった。

 ここまでの国会で菅義偉政権は総務、農林水産両省の官僚らの不祥事などを巡り野党の厳しい追及を受け、終始守勢に回った。それでも国会日程上の関門は順調にくぐり抜けた格好だ。

 予算案の審議は折しもコロナの感染拡大に伴う2度目の緊急事態宣言と重なった。そのため野党側にも、コロナ禍対策が盛り込まれた予算の成立をいたずらに遅らせては世論を敵に回しかねない、との判断が底流にあった。ただ、コロナ禍を奇貨として先を急ぐ政府、与党の拙速な姿勢に危うさや疑念を感じた国民は少なくないはずだ。

 政府、与党は今国会で20年度3次補正予算を成立させた後、わずか3日間の審議でコロナ対応の特別措置法を改正し、10日後に施行した。さらに首相の長男が関与した総務省官僚の接待や吉川貴盛元農相の汚職事件に絡む農水省官僚の接待問題で、実態が不透明なまま関係者の処分を下し、幕引きを図った。

 とりわけ納得がいかないのは接待が計13人、延べ39回に及んでいた総務省の問題だ。このうち7万円超の高額接待を受けていた元同省審議官の山田真貴子内閣広報官は一昨日、体調不良を理由に突然辞任した。

 山田氏は首相の意向を受け、職務を続ける姿勢を示していたが、批判が収まらず、事実上の引責とみられている。内閣広報官は政府の政策を国民に説明する重要ポストだ。山田氏をそこに起用し、今後も続投させようとした首相の任命責任は厳しく問われてしかるべきだ。

 無論、一連の接待で行政がゆがめられていないか、今後さらに徹底した調査が欠かせない。首相が繰り返す「自分は何も知らなかった」「結果的に国民に迷惑を掛けて申し訳ない」といった弁明で済むはずもない。

 霞が関の不祥事は政府予算の在り方と直結する。予算の立案・査定・執行を担うのは官僚にほかならないからだ。不祥事の続発で直面するコロナ禍対策をはじめ、少子高齢化や地方創生など諸課題に関する審議時間が衆院では十分に確保できなかった面もある。首相はその意味でも責任を自覚すべきだ。

 まもなく発生から10年になる東日本大震災の復興の在り方も含め、国会が議論すべきテーマは多い。参院での予算審議を決して「消化試合」に終わらせてはならない。

PR

社説 アクセスランキング

PR