焼き鳥店夫婦との別れ

 長年ひいきの焼き鳥店が昨年7月末に店を閉じた。新型コロナの影響だ。半年が過ぎてもあの味を味わいたい欲求と、かなわない現実の悲しさが、どこか心に強くある。

 閉店の3週間前、私は店を訪れていた。高齢夫婦が切り盛りする同店。客は私1人だった。すでに閉店を決断していたはずなのに、教えてはくれなかった。ただ、焼き鳥と生ビールを堪能する私の横におかみさんが座り、コロナのこと、五輪のこと、遠のいた客足のことを語り続けた。「うちはビルの2階の角で、換気はいいんだけどね」とつぶやいたのを覚えている。勘定を済ませると、夫婦そろって「今日は本当にありがとう」と見送ってくれた。常連の私に、最後のお別れをしてくれたのかもしれない。

 福岡県の緊急事態宣言は解除されたが、さまざまな業界がコロナの苦境にあえいでいる。何とか乗り切って。安直な言葉だが、そう叫ばずにはいられない。 (川原隆洋)

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