「周囲に広げたら…」感染看護師、よぎった辞職

 大分県内の病院に勤める40代の女性看護師が昨年、新型コロナウイルスに感染した。「同僚に申し訳ない」と自分をとがめる気持ちに押しつぶされそうになり、療養中は辞職も考えた。しかし同僚や家族らの支えに救われた女性。その経験を語ってくれた。

 感染が分かったのは昨年秋。職場の患者が感染し、その日のうちに他の患者や医療スタッフ計約50人がPCR検査を受診した。「陽性」。上司から結果を聞かされると、普段は明るいムードメーカーの女性も泣き崩れた。

 陽性患者の担当ではなかった。会話することがあってもごく短時間。もちろんマスクはしている。女性の感染経路は不明。症状もなかった。「自分が感染を広げてしまうんじゃないか」「クラスター(感染者集団)になれば病院名が公表され迷惑をかける」。不安にさいなまれた。

 病院によれば、過去に職員の陽性を公表した時に「ちゃんと対策をしていたのか」と対応を批判する電話があった。ただ女性を含めても感染者は5人以下で、病院名は公開されることはなかった。陽性が判明した翌日、自営業の夫と小学校、保育園に通う2人の子どもの陰性が確認された。「学校や園で広がったらどうしよう…」。自責の念が和らいだ。

 10日間ほど、大分市内のホテルで宿泊療養した。部屋の外には出られず、1日3食の弁当が届けられる日々。テレビやネットの動画を見て過ごした。2週間の自宅待機をしていた家族3人とは毎日電話した。たわいのない会話が心のよりどころだった。

 同僚からはメールが次々に届いた。「大丈夫?」「自分を追い詰めないで」「待っているよ」。自宅待機中の家族に食べ物を届けてくれた職員もいた。

 家族に、同僚に支えられている-。「職場に戻らないといけない」。時間がたつに連れてそう思うようになった。「感染すれば辞職」という前例も作りたくなかった。

 小学校や保育園の配慮も身に染みた。小学校では校長、教頭、担任のみが情報を管理し、学校の他の人には「家庭の事情で休んでいる」としか伝えなかったという。

 「コロナは亡くなる人もいるし、怖いというイメージがあるが、元気に回復する人も大勢いる」。昨年末に職場復帰した女性は「かかってみないと分からないことがある。私の経験を伝えることで、コロナを不安に思う誰かの役に立てば」と話した。 (吉村次郎)

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