どうする核のごみ 反原発・小出さんVS原発支持・稲垣さん

 世界の原子力発電所が出す核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の処理・処分の現状を伝えるドキュメンタリー映画「地球で最も安全な場所を探して」。反原発派で元京都大原子炉実験所助教の小出裕章さんと、原発支持派で九州大大学院工学研究院准教授の稲垣八穂広さん(放射性廃棄物)に、それぞれ映画を見た感想や、核のごみをどう扱ったらいいか、原発政策の在り方などを聞いた。 (構成・吉田昭一郎)

Q 「地球で最も安全な場所を探して」を見た感想は。

核のごみ、始末の仕方を知らぬまま、原発を動かす人間の愚かさ

 小出 私たちの世代は、原子力発電が生み出す猛毒、核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の始末の仕方を知らないまま原子力の利用を続けている。この映画は、核のごみの最終処分先を長年探し求めて、安全が確保できる適地が見つからない世界の現実を明らかにしている。科学信仰は間違いであること、まずは、原子力を止めるべきこと、そして人間とはなんと愚かな生き物かを、この映画は教えてくれる。

 核のごみのガラス固化体は、中身がむき出しになると、20秒ほどで周囲の人が死ぬくらいの放射能を持つ。この放射能は千年ほどでやっとウラン鉱石の放射能の10倍ぐらいに、数万年たってやっとウラン鉱石程度の放射能になる。だから、少なくとも千年ほどの間は、不測の事態で周囲に放射能が拡散するなら、人々は避難しなければならないような猛毒だと、私たちは知っておくべきだ。

伝えてほしかった、各界各層の議論と協力の必要性を

 稲垣 この映画は、高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題を「各国政府と電力業界 VS 地域住民」という対立構図の中で描き、各国の政策の矛盾やご都合主義をあぶり出している点は大変興味深い。ただ、現実として、世界各地に放射性廃棄物が相当量、既に存在し、誰かがどこかで最終処分を考えなければならない。対立を超えて、各界各層の議論と協力関係によって、より安全で効率的な方策を選んで推進する必要がある。作品にはそうした視点もほしかった。

 この映画は、高レベル放射性廃棄物の地層処分を巡る問題の本質に、科学的かつ技術的な観点から迫っているとは言えない。「放射性廃棄物は人類が生み出した最も危険な廃棄物」という字幕が出るが、なぜなのか、説明がない。世界で毎日、大量に排出される二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物、PM2・5の広がりと比べてどうなのか。放射線は確かに危険だが、それはどれほど危険なのか、どのように危険なのか、その理解なくして問題の解決には至らない。 反原発から原発支持に転じた人たちの声を記録した米国の記録映画「パンドラの約束」(2014年、ロバート・ストーン監督)を見ると、原発問題にもさまざまな見方や立場があることがよく分かる。今作は、確かに、原発推進論者たちの声を撮っている。しかし、断片的な発言にとどまっていて、なぜ、そういう発言が出てくるのか、その背景がよく分からないまま話が進む。対立意見をそれぞれ丁寧に紹介し、市民に問題を多角的に考え、議論してもらう工夫があってよかったのではないか。

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