災害時の避難 コロナ対策の徹底を図れ

 コロナ禍のさなかに大きな水害や地震が起これば、自治体には従来の災害対策とは異なる対応が求められる。とりわけ気掛かりなのは避難所である。

 10年前の東日本大震災の後、九州は熊本地震のほか福岡県や熊本県でも豪雨災害に見舞われた。多くの被災者が体育館などに逃れ、プライバシーの確保も難しい密集状態で、厳しい避難生活を強いられてきた。

 そんな環境に新型コロナウイルスが入り込めば、大規模な集団感染の発生は不可避だ。ただでさえ災害時の医療機関は負傷者などの治療に追われる。そこに多くの感染者が加われば、地域医療は崩壊しかねない。災害時の避難には今、徹底した感染症対策が欠かせない。

 避難所では受付時の検温、体調不良者の待機エリアの設置、手すりやドアノブの消毒といった感染症対策に伴う作業が大幅に増える。当然、運営に必要な人手も増える。十分な量の消毒液やマスクの備蓄も必要だ。

 熊本地震で被災した熊本県益城町は昨年、感染症に対応した避難所の運営訓練を行った。各自治体はこうした災害訓練を重ねることで課題を洗い出し、万全の備えを整えてほしい。

 大分県別府市などは建築家の坂茂氏が代表理事を務めるNPO法人と災害時の協定を結び、避難所で使う「簡易間仕切りシステム」を導入する。飛沫(ひまつ)感染の防止には知恵を絞る必要があり、参考になるのではないか。

 学校の空き教室などを活用して避難所の数を増やす努力も求められる。その上で、避難所だけに限らない分散避難も積極的に採用するべきだろう。

 内閣府は、高齢者などの優先的利用を想定し、ホテルや館も避難所として活用するよう自治体に通知している。有事に備え、複数施設と協力協定を事前に結ぶといった準備が大切だ。九州の宿泊施設は都市部や観光地に集積している。広域連携も積極的に進めたい。

 避難所での感染を恐れ、車中避難を選択する人が増える可能性もある。過去の災害でも一戸建てが多い地域では自宅庭で車中避難する人が目に付いた。長時間同じ姿勢でいるとエコノミークラス症候群など健康上のリスクが高まるため、推奨はできない。ただ予防効果のある着圧ストッキングの配布を地域によっては検討する余地はあろう。

 災害発生時、行政は「想定外」という言葉を使いがちだが、平時のうちに準備をきめ細かく進め、想定外を減らすことこそ肝要だ。災害はいつ起こるか分からない。感染症に強い避難体制の確立を急ぎたい。

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