地震のこと教えてくれた 3・11のタイヤ、娘の記憶

 岩手県大船渡市三陸町にある越喜来(おきらい)小学校のグラウンドに、タイヤの遊具が並んでいる。そのうち四つは、東日本大震災の津波で行方不明になった北里大2年瀬尾佳苗(かなえ)さん=当時(20)=が乗っていた車のタイヤだ。

 東京都出身の瀬尾さんは水族館の学芸員を目指し、同大の三陸キャンパスで学んでいた。仲間と畑仕事にも励むなど充実した学生生活を送っていたあの日、津波に襲われた。目撃者によると、逃げ遅れた車椅子の女性を避難させた後、引き波にのまれたとみられる。

 瀬尾さんが当時乗っていた車も津波に流されたが、実家に夏用タイヤが保管されていた。震災から6年がたつ頃、両親は「持ち主の帰りを待たせるより、娘が好きだった場所で活用したい」と越喜来小に寄贈。以来、子どもたちは瀬尾さんの生涯を演劇で上演することで記憶をつなぎ、関係はさらに深まっている。

 父眞治さん(66)は人助けをした娘を誇りに感じるものの、無念の思いは消えない。それでも「越喜来に新たな居場所とつながりができたことは、娘が一番喜んでいるはず」と話す。震災後に生まれた同小1年の菊地凛華さん(7)は「タイヤでいつも遊ぶよ。かなえちゃんは優しいお姉ちゃんだったんだろうね。地震のこともタイヤが教えてくれたよ」と笑った。

 警察庁によると、岩手、宮城、福島3県を中心に2500人超が行方不明になっている。 (帖地洸平、写真も)

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