「次の手」ないまま宣言再延期 従来の対策繰り返す

 菅義偉首相は首都圏1都3県について新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の再延長を正式決定したが、新たな一手を打ち出すことはなく、従来の防疫対策を重ねて呼び掛けた。手詰まり感も漂う中、感染力がより強いとされる変異株がじわじわ広がっている。専門家の間には「この2週間はむしろ、変異株に備えて病床を確保する準備期間」と冷静に捉える向きもある。

「経済再生重視」看板と整合性

 5日夜の政府対策本部に先立ち、衆参両院の議院運営委員会に宣言延長を事前報告した西村康稔経済再生担当相は「緊密に連携しながら、感染拡大防止に向けた取り組みを徹底していく」と答弁した。「2週間で宣言を解除できるのか」とただされた際も「この2週間、全力を挙げる」とし、具体策には何ら触れなかった。

 政府関係者によると、新規感染者数の減少が鈍化している東京都は「もう一段、ギアを上げる」(小池百合子知事)対策として、現行の飲食店に対する営業時間短縮要請より強い休業要請に踏み込めないか、水面下で模索してきた。だが、“営業補償”がとめどなくなることから埼玉、千葉、神奈川各県は共同歩調に難色を示し、政府サイドも門前払いしたという。

 そもそも、今回の宣言は地域や業種を絞り「限定的、集中的」にウイルスをたたく戦略だった。政府としては「いまさら『対策が甘かった』と自認したかのようにみられる方針転換はできない」(官邸筋)。強い措置は、「経済再生重視」の看板と整合性を取るのが苦しくなる事情もあった。

変異株の動向に最大限の神経

 「この2週間で病床の安定が図られる。リバウンドの時期も後ろにずらすことができる」。5日、専門家による政府諮問委員会の会合で、首相の相談役でもある医師の岡部信彦氏は発言し、その判断を了とした。率直に「即効薬はないのだ」とも述べた。

 これまで、ともすれば政府と立場を異にしてきた諮問委メンバーだが、今回は、7日での宣言全面解除の既定路線が切り替わったことに安堵(あんど)感が強い。「病床使用率が危機に対処できるレベルまで低下するかを見極めたい」との政府のロジックにも理解を示す。

 一つには、政府が宣言解除後に向けた「出口戦略」を具体化しつつあることも大きい。時短要請の段階的緩和▽業務逼迫(ひっぱく)を受けて態勢を縮小していた保健所による「積極的疫学調査」の復活▽福岡県など先行解除した6府県で順次始まっている繁華街などでのモニタリング検査の拡大-。特に変異株の動向に最大限の神経を集中し、宣言の有無にかかわらず、リバウンドの“第4波”の兆候を早期に探知してつぶすことが肝要となる。

 「ウイルスとの闘いは果てしない。宣言解除後の方が、道のりははるかに長いんだ」。諮問委を取り仕切る尾身茂氏は5日、自らに言い聞かせるように周囲を鼓舞した。

 (河合仁志、久知邦)

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