復興予算30兆円「今こそ検証を」 元東北財務局長

 遠賀信用金庫(福岡県岡垣町)理事長の岡部憲昭さん(65)は東日本大震災の発生当時、東北地方を管轄する財務省東北財務局の局長だった。迅速な被害の把握と予算査定で復興に尽くしたとの自負がある半面、過大な規模の事業があったのではないか、との懸念が消えない。被災地の現状を確かめたく、毎年のように足を運ぶ。 (井崎圭)

 「状況を報告してくれっ」。本省から次々に問い合わせが届く。避難所としての国有物件の提供、自治体への人的支援…人手が割かれる中、財務局トップの岡部さん自身が現場に出向き、報告をまとめた。

 ≪町の7割が完全に消失≫(3月23日、宮城県南三陸町)≪原発事故の風評からトラックが入らず、食料が極端に不足≫(同24日、福島県南相馬市)

 自治体から聞いた国への要望に加え、地震、津波、原発…複合災害による対応の難しさを伝えた。首長も津波にのまれた岩手県大槌町の死者、行方不明者は人口のおよそ1割。4月5日、こう記した。

 ≪津波、火災で爆撃を受けたような無残な姿≫≪(役場は)疲労の色が濃い。国、県による業務の支援が急務≫

 通常、予算は自治体からの要望を受けて関係省庁がまとめて要求。財務省は現地の実情を把握した上で、事業の必要性や規模を細かく査定する。「被災地からのレポート」と呼ばれた報告には大臣も目を通し、迅速な査定、予算執行を後押しした。2011年度に震災対策として組まれた補正予算は計3回に及ぶ。

 それから10年。東京電力福島第1原発事故の影響を受ける福島県を除けば、被害が大きかった岩手、宮城両県の復興はある程度進んだとされる。

 だが30兆円超の予算総額は過剰との批判もある。総延長430キロ超の防潮堤は住人がいないエリアもカバー。かさ上げされた宅地には「空き地」が目立つ。人口の減少、流出は十分に考慮されていたのか、と指摘される。

 岡部さんは、東北がかわいそう、大変だと一方的に捉える当時の風潮が事業を膨らませた、とみる。「(審査や基準を)厳しくすればスピードが止まる。批判は覚悟の上で走らざるを得なかった」。そう打ち明ける。

 巨額の金が投じられた復興事業は、想定通りの成果を得たのか。被災者に不公平感を生んでいないか-。今、検証すべきだと言う。「中身を精査して検証しなければ、本当の『賢い支出』にはたどり着かない。次の大規模災害に備えた教訓を得ることが必要だ」

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