残った宝物「言葉っこ大事に生ぎでくよ」【動画】

沈まぬことば 東日本大震災10年(上) 「おんばてんでんこ」つながりを生んだ方言

 東日本大震災の被害が大きかった宮城県北部の港町気仙沼市で、方言が一つ、消えようとしていた。

 「ばばば」。驚いたときに発する感動詞である。ドラマ「あまちゃん」で多用され、流行語になった「じぇじぇじぇ」に近い。震災前は誰もが使っていた。

 昨年暮れ、東北大方言研究センター教授の小林隆さん(63)は、住民から「もう使わなくなった」と聞かされた。

 震災以降、被災地で失われつつある方言を調べてきた小林さんは「ばばば」と驚きはしなかった。

 10年前の津波は喜怒哀楽に満ちた素朴な日常を奪い、沿岸地域のコミュニティーは崩壊した。土地の人々の暮らしと共にあり、狭い人間関係の中で保たれてきた方言が失われるのは避けられなかった。よその土地からは、ボランティアや復旧作業の従事者が大挙して押し寄せた。通じない方言の使い控えは当然起こる。

 では、災禍の結果、共通語が浸透しても東北の方言は残っていくのだろうか。

 小林さんは「方言が持つ人の心の距離を縮める力」を信じている。「がんばっぺし」「がんばるべ」「まげねど」。震災以降、方言スローガンが世にあふれた。熊本地震でも「がまだせ(頑張れ)」と叫ばれた。標準語では伝わらない応援の気持ちが、方言だと心に響くと語る被災者は多い。

 近年、日常的には方言を使わない若者がSNS上では方言を交えるコミュニケーションにも小林さんは注目する。

 「方言の効果を察して取り入れているのが面白い」

 大震災によって方言の心に訴えかける力が「発見」された。方言が生き残る道のヒントはそこにある。

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 津波にさらわれた地域にとって、方言は手元に残った「宝物」なのかもしれない。住民たちにそう気づかせた人がいる。

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