中国全人代 国際協調損ねる強硬路線

 どこまで強大な国を目指し、国内外に脅威を与えようとするのか。中国政府の姿勢にそうした懸念を深めざるを得ない。

 中国は国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で今年の国防予算案を公表した。日本の防衛費の4倍強となる1兆3553億4300万元(約22兆6千億円)が計上されている。

 世界各国が長引く新型コロナ禍に苦しむ中、中国はいち早く経済を立て直し、昨年の成長率は2・3%を達成した。それにしても予算の対前年比で6・8%増の軍拡は突出している。

 中国は空母や弾道ミサイルの増強にとどまらず極超音速兵器など先端兵器の開発を進め、宇宙やサイバー空間、人工知能(AI)といった新領域でも着々と戦力を整える。公表された予算以外にも軍事関係費があるとの分析があり、その規模だけでなく透明性にも問題がある。

 米国に対抗できる軍事力整備を意図しているのだろうが、日本をはじめ周辺国にとっては安全が脅かされるばかりだ。この地域一帯の不安定要因であり、日本政府は中国に強い憂慮を伝え、説明も求めるべきだ。

 中国が2月に施行した海警法も看過できない問題だ。海警局に中国が主張する「管轄海域」での武器使用を認めているが、その定義は曖昧で、国際法上の根拠を欠く疑いが強い。沖縄県・尖閣諸島周辺では海警局による領海侵入が活発化し、日本漁船にも度々接近している。不測の事態を招きかねず、海警法を背景としたこうした行為は断じて許されない。

 中国の一連の対外姿勢には欧米でも警戒感が広がる。フランス海軍のフリゲート艦が2月に九州西方沖で日米との共同訓練に参加し、英国やドイツが相次いで太平洋への艦艇派遣を表明したのはその一例だ。各国が地理的に遠い東アジアに軍事的関与を強めようとするのは、中国の振る舞いが航行の自由や法の支配を脅かし、他地域に及ぶ影響を重視しているからだ。

 中国は厳しい国際世論の変化を見誤ってはならない。

 全人代では香港の選挙制度改革も打ち出された。「愛国者による統治」と称しつつ、習近平指導部の方針と相いれない民主派の政治参加を阻む意図は明らかだ。英国からの返還後50年は「一国二制度」を維持するという外交上の約束を形骸化させる独善的な行為は、国際社会の信頼を一層損なうだろう。

 世界は今、コロナウイルスの感染拡大や気候変動など一国だけでは解決できない難題に直面している。中国の強硬路線は協調が求められる時代の潮流にも逆行する。大国としての責任を自覚した行動を求めたい。

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