福島事故10年、原発維持 与野党が「現実路線」

 東京電力福島第1原発事故で原発の是非は、国論を二分するテーマとなった。菅義偉首相は、自ら掲げた「2050年までの温室効果ガス排出の実質ゼロ(カーボンニュートラル)」を実現するため、原発の維持、推進が欠かせないとの姿勢を強めている。野党第1党の立憲民主党は「原発ゼロ社会」を目指す方針を堅持する半面、枝野幸男代表は政権を取ってもすぐに実現するのは困難との「現実路線」を打ち出しつつある。

 「資源の乏しいわが国で、気候変動問題や電気料金の上昇などを考えるときに、原発ゼロで最適な政策を実現できるというのは極めて厳しいと思っている」。3日の参院予算委員会で首相は、今後の原発政策の方向性をこう明言した。

 新増設や再稼働を巡る国会論戦では梶山弘志経済産業相に答弁を任せ、自らは発言を避ける場面が目立っていた首相。もともと、官房長官時代から原発に関する言動が少なく、「賛否は中立なのではないか」(周辺)ともみられていた。それだけに、今回のメッセージは明らかに踏み込み方が異なり、自民党の中堅議員は「10年目の『3・11』を前に、特に自民内の原発推進派に向けて発信したのだろう」とその心中を推し測った。

 一つの契機となったのは、昨秋の「カーボンニュートラル」だ。財界の意を受けた自民内の推進派が、「発電時に二酸化炭素を出さない原発は不可欠」との主張を「大合唱」(自民幹部)し始め、今冬の電力需要の逼迫(ひっぱく)もこうした声を後押しした。推進派には有力議員が多い。党内基盤の弱い首相が配慮をせざるを得ない力学も作用することとなった。

 「この10年で、自民の原発活用の機運は今が最も盛り上がっている」と推進派の大臣経験者は言う。今年、予定されるエネルギー基本計画改定を見据え、既存原発の再稼働推進や運転期間延長に加え、新増設を首相が決断することにも期待を寄せる。

      ■ 

 一方、今年の「3・11」を前に注目を集めたのが、事故当時に官房長官だった立民の枝野氏だ。

 2月の西日本新聞の単独インタビューで「原発をやめるということは簡単なことじゃない」と発言。「原発ゼロ社会を一日も早く実現する」と定めた党綱領と矛盾するとして、反原発団体などから批判と失望の声が相次いだ。同26日の記者会見では「政権を取れば原発をやめることを明確に始める」としたものの、「ゴールは100年単位」と補足するのを忘れなかった。

 枝野氏は、周辺には「『市民運動的な脱原発派』とは違う」と真意を漏らす。実際には、支持母体である連合傘下の民間労組に「原発ゼロ」への反発もあることから、近づく次期衆院選を前に軌道修正を図ったとの見方も強い。「再稼働反対」を訴える共産党などとの共闘には障害となる可能性が出てきている。

(湯之前八州、川口安子)

関連記事

PR

社会 アクセスランキング

PR