香港の民主化閉ざす選挙制度変更 中国全人代「反対0票」

 【北京・坂本信博】中国の全国人民代表大会(全人代)が11日、香港の民主化への道を閉ざす選挙制度変更を決定した。香港市民の政治的な活動や言論の自由を制限する国家安全維持法(国安法)の導入を決めた昨年5月の全人代からわずか10カ月。民主化を願う若者は今も、当局の統制をかいくぐって抗議活動を続けるが、親中派の新政党が動きだすなど、街の表情は激変している。

 「反対0票」。北京の人民大会堂のモニターに香港の選挙制度変更の採決結果が表示されると、場内で拍手が30秒近く続いた。中国国営中央テレビはこの日の朝から、選挙制度変更に賛同する香港市民や海外の華僑、専門家の声を繰り返し報道。香港メディアは全人代の決定を速報した。

 新たな制度には民主派を排除するさまざまな手段が盛り込まれた。香港メディアによると、立法会(議会)選挙などの候補者が「愛国者」かどうかを審査する機関を設置。一般有権者が投票できる立法会選の直接選挙枠を減らし、民主派が勝てない仕組みも検討する。仮に当選しても議員宣誓違反などで議員資格を取り消すことが可能だ。

 「香港の選挙制度を、民主的な選挙のない中国と同じレベルに引き下げて民主化の芽を摘む狙いだ」と民主派を支持する女性は嘆く。デモに参加したことがある女性は「民主派が立候補できなくなれば、投票のボイコットで不支持を示す人が増える」と指摘。投票率の大幅な下落や白票が急増する事態も予想される。

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 2019年夏に反政府デモが本格化した香港では、香港警察の取り締まり強化と新型コロナウイルス対策でデモや集会が非合法化された。今月1日、国安法の「国家政権転覆共謀罪」で起訴された民主派47人の初公判があった際には、裁判所の近くに1人で様子を見に来た若者まで「集会を開いている」として当局に拘束されたとの情報がある。

 若者たちは、街頭やバスの座席に油性ペンで「光復香港 時代革命(香港を取り戻せ 時代の革命だ)」とスローガンを書いたり、中国を批判する内容のステッカーを張ったりする「文宣活動」を続ける。これらは国安法違反のため、民主化運動の記念日の数字だけを書く人や、会員制交流サイト(SNS)上に、文宣の画像を投稿して抵抗の意思を示す人もいる。ただ、抗議活動の衰退は明らかで、民主化支持の女性は「流れは変えられない。今後、海外移住を希望する人が増えるだろう」と語った。

 香港では昨年、中国本土出身者の金融関係者らが中心となって親中派の新政党「紫荊党(バウヒニア党)」を設立した。バウヒニアは香港のシンボルの花だ。党の実態は不明だが、党員25万人を目標に掲げる。香港在住の40代の日本人男性は「中国共産党のかいらいで、選挙制度変更を見越した『大政翼賛政党』との見方が根強い」と話す。

 中国政府は香港問題を「核心的利益」と位置付け、欧米からの批判に「内政干渉だ」と繰り返す。ただ、北京の外交筋は「対米関係を修復したいのが中国の本音。米欧が反発必至の選挙制度変更を性急に進めたのは習近平国家主席の意向か、周囲の忖度(そんたく)なのか分からない」とした上で「ブレーキをかける仕組みがない独裁体制の産物。中国の危うさを象徴している」と指摘した。

 

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