福岡県政界「新・三国時代」犬猿2氏、歴史的接近

 福岡県知事選(25日告示、4月11日投開票)で自民党は12日、副知事の服部誠太郎(66)を推薦することを決めた。一部国会議員が推していた元国土交通省局長の奥田哲也(59)が出馬表明直前に辞退したことで保守分裂は回避されたが、この「撤退劇」の裏では今後の県政界の行方を左右しかねない2人の実力者による「歴史的な会談」(県関係者)があった。

 5日の閣議後、総務相武田良太は、財務相麻生太郎を呼び止めた。「ちょっと、お話があります」

 武田は、自民県議団の重鎮蔵内勇夫が服部を支援していることに反発し、奥田擁立に動いていた。麻生は静観していたが、事務所ぐるみの付き合いがある服部の擁立を容認していた。麻生にとって武田から直接誘われたのは長い議員生活で初めて。「分かった。大臣室に来てくれ」と応じた。

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 同日夕、財務大臣室。武田は「服部さんの体調はどうなんでしょう」と水を向けた。「服部さんに代わって蔵内が出てくることはないでしょうか。それだけは絶対に駄目なんです」

 それを聞いた麻生は「蔵内なんてことはない。おまえらが絶対に駄目なのは俺なんじゃないか」と皮肉をぶつけた。

 麻生はこの時点で、奥田への支持が広がっていないことを把握していた。旗色が悪くなった武田が奥田を諦め、着地点を探っていると読んだ。

 「(服部で)一本化する用意があります」。本題を切り出した武田に、麻生は「今は非常事態じゃねーか。知事選を政争の具にしているときじゃねーだろ。俺たち国会議員は総理大臣を選ぶのが仕事だ。県議が一致している知事候補に横やりを入れてどうすんだ」。2019年の前回知事選での分裂のしこりをいったん脇に置き、対立を回避することで一致した。

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 「歴史的な日だ」。2人の会談を知った県議たちはざわめいた。

 「水と油」といわれる麻生と武田。かつて2人と親交が深い元官房長官の河村建夫が仲介役を買って出たことがあったが、麻生は「あんたが見ている武田と、俺が見ている武田は違うんだ」と拒否。顔を合わせることすら実現しなかった。

 麻生が会談に応じた理由について、県議たちの間では「80歳の麻生さんはいずれ地盤を後継に譲る。武田さんと敵対しない方がいいと考えた」「衆院選を考えて分裂させてはいけないという責任感だ」など、さまざまな臆測が飛び交った。

 ある県関係者は、今回の会談を機に麻生と武田、蔵内との関係に変化が生じると予測する。麻生と蔵内は16年の衆院福岡6区補選、前回知事選などで共闘してきたが、2人が結びついたのは武田という「共通の敵」がいたことが大きい。麻生と武田が「雪解け」すれば、反作用で蔵内との間には隙間風が吹くのでは-。

 麻生周辺は「知事選を収束させるために会っただけ。終われば元通り」と話す。県議にも「あの2人の関係が簡単に修復するわけがない」との見方が強い。ただ、次期衆院選の福岡5区は麻生派の現職と蔵内が後見人となっている県議とがぶつかり合う構図。県連関係者は「昨日の敵は今日の友。麻生さんと武田さんの利害が一致すれば、蔵内さんが『共通の敵』に回ることもあり得る」と漏らす。

 麻生と元幹事長古賀誠、山崎拓の3人による長年の覇権争いを経て、県政界はいま、麻生、武田、蔵内による「新・三国志」時代に突入しようとしている。 (敬称略)

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