加速する少子化 未来揺るがす危機的状況

 子どもの出生数が加速度的に減少している。このままでは社会の活力が失われ、国の健全な発展も望めない。少子化対策の抜本的な見直しが急務だ。

 2020年の出生数が過去最少の87万2683人(前年比約2万6千人減)にとどまったことが、厚生労働省の人口動態統計(速報値)で分かった。在留外国人を除いた日本人の出生数は84万人前後と推計され、初めて90万人を割った19年の「86万ショック」(出生数約86万5千人)をさらに下回る水準だ。

 一方、20年の外国人を含む死亡数は約138万4500人(前年比約9千人減)と11年ぶりに減少した。新型コロナウイルスの対策でマスクの使用が定着し、呼吸器系の疾患が減ったことなどが要因とみられる。

 それでも人口の自然減は約51万2千人に上り、これが21年には一段と増加する見通しだ。

 20年の婚姻件数は約53万7600組(前年比約7万8千組減)と大幅に落ち込み、妊娠届出数の減少も目立つ。これに伴い21年の日本人の出生数は80万人を切る恐れが出ているのだ。

 政府の将来人口推計(17年)では、16年に100万人を割った出生数が80万人以下になるのは30年とされていた。その予測が約10年も早まるとなれば、日本の未来を揺るがす危機的な状況と捉えるべきだろう。

 この少子化の加速はコロナ禍による結婚の延期や子どもの産み控えといった理由だけに起因するわけではない。結婚適齢期の女性人口の減少、晩婚化、非正規雇用の拡大による格差の固定化など、背景にはさまざまな構造的な問題も横たわる。とりわけ、子どもを持つことを希望しながら人生設計への不安から結婚に踏み切れない若者が増えていることは見逃せない。

 菅義偉政権は従来の子育て支援に加え、不妊治療の公的保険適用を打ち出した。今後は若い世代の雇用の安定、賃金底上げなどを軸に出産や子育てを後押しする施策も推進すべきだ。

 子どもを巡っては、一人親世帯の貧困、虐待の多発、小中高校生の自殺急増といった深刻な問題も連鎖的に広がっている。その点を踏まえ、自民党の若手議員グループが諸対策を一元的に所管する「子ども家庭庁」の創設を提唱している。

 同様の構想は旧民主党政権が掲げ、実現に至らなかった経緯がある。この際、既存の取り組みを総合的に見直し、縦割り行政を是正していく意味でも、一考に値する案ではないか。

 子どもを守り育てる営みは社会全体の責務でもある。政府と同時に市民一人一人も役割を再認識し、若者を支援するさまざまな取り組みの輪を広げたい。

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