防衛マネー事業検証ずさん 誤記載や同一文言

 防衛とは無関係の住民サービスに使い道が広がる特定防衛施設周辺整備調整交付金(特防交付金)で、地方防衛局や自治体による事業評価がずさんになっている。九州では特防交付金を受ける20市町が評価書を提出。九州防衛局は内容を精査して修正を求める立場だが、ホームページ(HP)に誤った内容を掲載。自治体が作成した評価書には一字一句同じ成果が書かれたケースが複数見つかった。

 「路線、料金を見直し、効率的・効果的な運行を行う」。長崎県佐世保市のし尿処理施設の整備(2016年度)の評価書は改善措置としてこう記していた。事業とは無関係の内容で、大分県九重町のコミュニティーバス事業(16年度)の評価書にも全く同じ文言があることが分かった。

 市の担当者は「九州防衛局に提出した文書とは、異なる物がHPに掲載されている」と説明。し尿処理施設の評価書とあるのは、15年度の事業で提出したもので、それにも改善措置の文言はなかったという。

 市が1月に確認したところ、九州防衛局側のミスが判明。翌日、HPは改善措置の欄に「無」と書かれた16年度の評価書に差し替わった。九州防衛局は取材に対し、「公表に不備があってはならない。チェック態勢を強化する」とする一方、記入がなかった改善措置が挿入された理由は説明しなかった。

 各府省が所管事業の無駄を洗い出す行政事業レビューは13年、特防交付金について「交付対象の厳格化や効果検証が不十分でルール化が必要」と指摘。防衛省は14年度から、評価書に不備があれば防衛局が修正を求め、成果目標を達成できない場合は翌年度に改善させる仕組みを導入した。

 九州の20市町で18年度、事業評価の対象になった93件で「改善が必要」との指摘はゼロ。九州防衛局は「14年度から、修正や改善を求めた事例はない」と話す。評価書の書式には「第三者機関の活用の有無」を記す欄もあるが、18年度に記述があったのは佐世保市の1件のみだった。

 疑問が浮かぶ評価書はほかにも。福岡県岡垣町は側溝整備事業2件(18年度)について評価書を提出。それぞれ別の場所で行った事業にもかかわらず、「排水機能が改善され、『安全な歩行が容易になった』との意見が寄せられた」と全く同じ文言を記した。町の担当者は「地元意見を基に提出した。良いか悪いかは防衛局の判断」と説明する。

 18年度は岡垣町を含む4市町の計12件の事業で、ほぼ同じ文言を含む評価書が提出されていた。九州防衛局は「個々の事業はそれぞれの自治体できちんと評価されている」としている。

 20年度の事業レビューで防衛省は、17~19年度に事業評価の対象になった全国120市町村の約1600件全てが「目標を達成した」と報告。ある自治体関係者は「たくさんある交付金の中でも、特防交付金は使途や事後評価のチェックが緩くて使いやすい」と話す。 (梅沢平)

外部の客観的な評価必要  

 行政事業レビューを担当した関西学院大の上村敏之教授(財政学)の話 特防交付金の事業評価は、第三者機関による検証や住民の満足度を数値化して示すなどの工夫がなく、自己評価の域を出ない単なるパフォーマンスだ。監督責任がある防衛省や防衛局のチェックも機能しておらず、外部から客観的に評価できるよう改善が必要。事業評価が不十分なら、次年度の交付額に反映させることも考えないといけない。特防交付金の仕組みや事業一覧、評価書を一元的に紹介するホームページもなく、効果検証や周知の徹底を求めたレビューの指摘が生かされていない。使い道が広がっているからこそ、丁寧な説明責任が伴う。

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【ワードBOX】特定防衛施設周辺整備調整交付金(特防交付金)

 米軍や自衛隊の基地、演習場のうち、防衛大臣が指定した施設の周辺自治体に交付される。創設時の1974年度は5億円、2020年度は73施設の120市町村に約227億円が配分された。九州・沖縄では23施設の38市町村に計約67億円。当初「箱もの」に限った使途は、11年度から医療費助成などの住民サービスにも広がった。事業評価は200万円以上の事業が対象で、完了から3カ月以内にA4判の評価書に目標や成果、改善措置を記入して地方防衛局に提出。防衛局が内容を確認してホームページで公開する。

  

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