休業と失業の狭間で…政府支援届かぬ「146万人」

 新型コロナウイルス対策が長期化する中、飲食業を中心にパートやアルバイトの苦境が続いている。勤務時間を大幅に減らされ、休業手当も受け取れていないこうした労働者はいわば「実質的失業者」といえ、全国で146万人に上るとの民間推計もある。だが雇用統計では数字も実態も把握されず、政府が用意する支援策の情報も当事者に届き切れていない。

 「貯金を切り崩して生活している。仕事がなく、失業しているみたいだ」

 都内の飲食店でアルバイトとして働く20代男性はこの1年を振り返った。昨年春の緊急事態宣言時は店舗が休業、解除後もシフトのカットが続く。コロナ禍前に20万円ほどあった月収は今月、5万円まで落ち込みそうだ。シフト勤務で先の労働時間が確定していないことを理由に、会社からは休業手当の支払いを拒まれている。

 雇用を直撃した新型コロナだが、政府統計によれば、昨年の完全失業者数は191万人で、20年間で4番目に少なかった。代わりに増えたのが、雇用は維持されても仕事がない「休業者」で、過去最多の256万人。一方で男性のようにシフトカットが続く労働者は「就業者」に分類され、実態が見えない。

 野村総合研究所は、新型コロナの影響で勤務時間が半分以下になり、休業手当を受け取れていない人を「実質的失業者」と定義。2月にパート・アルバイト約6万5千人を対象に行った独自アンケートの結果から、実質的失業者は全国で146万人(女性103万人、男性43万人)に上ると推計した。

 しかもこうした影響を受けた人たちの所得はもともと高くない。アンケートで実質的失業者に当てはまった人たちのコロナ以前の世帯年収は女性の約3割、男性の約5割が200万円未満だった。

 政府はかつてない規模の支援策を打ち出している。企業が従業員に支払う休業手当は、雇用調整助成金の特例措置で企業負担がほとんどなくなり、解雇で失業者が増えるのを一定程度防ぐ役割を果たしている。

 昨年夏には、休業手当を受け取れない人に国が直接給付する「休業支援金・給付金」の制度が創設された。対象も拡大され、勤務時間が減少したシフト制のアルバイトなどにも支給されるようになった。

 厚生労働省はホームページなどで制度の周知を続けているが、活用は進んでいない。政府が確保した休業支援金の予算5442億円のうち、支給が決まったのは802億円(3月4日時点)にとどまる。

 野村総研の2月の調査では、実質的失業者に当てはまる回答者の約半数が、休業支援金を受け取れることを知らなかった。労働組合の飲食店ユニオンの担当者は「シフトカットされた労働者に必要な情報が届いていない」と嘆く。

 武田佳奈・野村総研上級コンサルタントは「失業でも休業でもないため支援対象になるとの認識が当事者に薄く、情報にアクセスできていない」と分析。厚労省は昨年、無料通信アプリ「ライン」の利用者8千万人超を対象に、感染状況を調査した実績があり、武田さんは「ラインなどを用いて、支援が必要な人に直接情報を届ける方法を国は考えるべきだ」と話す。

(久知邦)

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