『劇場版 仮面ライダービルド~』北九州で躍動、アートな逃走劇

フクオカ☆シネマペディア(29)

 北九州市役所前の道路を450メートル封鎖、主人公がダッシュやバイクで市内各所を駆け巡る。ロケに動員したエキストラは約3千人。「劇場版 仮面ライダービルド Be The One」(2018年、上堀内佳寿也監督)は、北九州の街をキャンバスに描き出すスペクタクル大作だ。

 いったん事あらば仮面ライダービルドに変身して戦う天才物理学者、桐生戦兎(犬飼貴丈)が主人公。時は、国が三つに分断されて起きた戦争が終結し、3都市が協力して国を支える和平が整ったところ。都市の一つ、東都の新知事、伊能賢剛(勝村政信)の就任演説が始まる。

 舞台は北九州市役所前の道路だ。群衆が大きな演説車を囲んで一帯を埋め尽くす。実は、伊能は地球外生命体グループのメンバー。人間に擬態し、和平の裏でひそかに地球滅亡をたくらむ。「仮面ライダーは戦争の兵器。われわれを苦しめる元凶だ」「ビルドを殲滅(せんめつ)せよ」。伊能が叫ぶと、群衆は腕を突き上げ「殲滅」コールを始める。光線を照射され、ビルドを追いかけ始める。

 ビルドはゾンビのように迫る群衆に驚き、市内を逃げ惑う。小倉井筒屋クロスロードの中心部に追われたビルドに、群衆が四方から押し寄せ密集する。四つ角の真上から撮った群衆が動く様子は、エサに群がるアリのようであり、ある種のアートのようでもある。

 ビルドは密集を抜け出して走って逃げ、バイクに乗る。さしかかるのは、門司港のはね橋「ブルーウイングもじ」。両側の橋台が開き始めたところをバイクでジャンプして逃げ延びると、今度は、サッカーJ2ギラヴァンツ北九州の本拠地、ミクニワールドスタジアムのピッチ。天然芝を群衆に追われて駆け抜ける。

 伊能らの「ビルド殲滅計画」は洗脳の浸透とともに着々と進む。仲間たちも裏切り始める。相棒の仮面ライダークローズ、万丈龍我(赤楚衛二)さえ洗脳され、桐生を襲う。ビルドは絶体絶命だ。

 ところで、筆者は、武術のたしなみのあるタフガイ、藤岡弘演じる初代の仮面ライダー世代。イケメンできゃしゃで身近な感じがある犬飼の仮面ライダーに時代の流れを感じる。コンピューターグラフィックス(CG)が駆使され、光がさく裂する変身や戦いの場面はまばゆい。

 公開当時の世界は、批判的なマスコミ報道を「フェイク(うそ)」と決めつけ言論封殺を図る一方、怪しげな陰謀論を唱える一派の支持も受ける大国の大統領をはじめ、危ういポピュリズムに乗っかった国家元首たちの強権・独裁が目立った頃だ。権力が「愛と平和」を願う仮面ライダービルドを「悪」と決めつけ、洗脳した群衆に追わせる物語はそうした時代背景の下で描き出された。

 戦いを終えた仮面ライダーの仲間たちが集うのは鴎外橋のたもと。そこから、カメラは上空へ、小倉の中心街を俯瞰(ふかん)し、エンドロールが始まる。子どもたちの夢をのせ、未来を感じさせる映像だ。 (吉田昭一郎)

※「フクオカ☆シネマペディア」は毎週月曜の正午に更新しています

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