「変異株の第4波」防げるか 緊急事態全面解除へ

 新型コロナウイルス緊急事態宣言が全面解除の方向となる中、感染力が強いとされる変異株が広がってきた。感染者数は1カ月前の約4倍に増え、26都道府県で確認されている。監視体制は自治体によって濃淡があり、市中感染の実態を厚生労働省もつかめていない。専門家は「全国で監視体制を早急に強化するべきだ」と危機感を募らせる。

 「変異株は現状より急速に拡大するリスクが高い」。厚労省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の脇田隆字座長は17日、会合後の記者会見でこう言い切った。

 報告によると、国内で確認された変異株(空港検疫を除く)は16日時点で399人。1カ月前は108人で、約4倍に増えた。英国、南アフリカ、ブラジルで流行が始まった3種類だが、国内感染者の9割超を占める英国株は感染力が最大7割強まったとの試算もある。入院や死亡リスクの増加も指摘されている。

 厚労省は自治体に対し、新規感染者の「5~10%」を対象に変異株かどうかの検査を求めている。この程度の網の張り方では感染者を見落とす恐れがあり、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は「感染拡大を抑え込めず早晩、変異株による第4波を招くのでは」と危惧する。

   ■    ■

 実際、積極的に検査している自治体では感染者が相次ぐ。新規感染者の6割超に検査する神戸市では、変異株が4日時点で74人と全国でも突出。担当者は「神戸だけにまん延しているとは思えない。他の自治体も検査割合を上げれば見つかるはずだ」と話す。

 既に水面下で広がっている可能性は否定できない。北海道大の北島正章助教(環境ウイルス学)らの研究チームは昨年12月4日、ある都市(非公表)の下水を採取し、分析した。

 すると検出された新型コロナの遺伝物質のうち5・9%が変異株由来だった。国内で初めて変異株感染者が確認されたのは同25日だが、その3週間前には市中に広がっていたことを示す。今年1月7日に同じ都市で再び下水を採取したところ、変異株由来の割合は12・4%に増えていた。「変異株に置き換わりつつあることが示唆されている」と北島助教は話す。

   ■    ■

 自民党の新型コロナウイルス感染症対策本部は17日、「大部分が見過ごされている可能性がある」として政府に変異株の監視体制強化を求める提言をまとめた。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長も10日の国会で答弁し「オールジャパンでモニタリングを強化することが急務だ」と訴えている。

 厚労省は民間検査会社と契約を結んで監視体制の強化を進めており、変異株の感染者が確認された自治体では「抽出割合を上げる」とする。ウイルス変異を調べるゲノム解析も国立感染症研究所に限定せず、大学などへの委託を模索中という。

 政府の対応が変異株拡散の実態に追い付くのかどうか。分科会のある委員は、昨夏から提唱してきた高齢者施設職員への定期的なPCR検査がようやく本格化したことを挙げ、「そういう時間軸でしか前に進まない」と嘆く。 (久知邦)

関連記事

PR

社会 アクセスランキング

PR