休業手当の支払い回避狙い? 業務委託へ突然変更

 「新型コロナウイルス禍の中で、直接雇用から業務委託に契約変更され、休業手当や国の支援金をもらえなくなりました」。福岡市内の日本語学校の非常勤講師から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に訴えが届いた。2020年9月、学校側から「4月にさかのぼって業務委託へ変更する」と詳しい説明なく契約書を渡され、サインしてしまったという。専門家は、休業手当の支払いを回避する学校側の狙いがあるとみている。

 この講師によると、インターネットで求人を見つけ、ハローワーク経由で19年度に学校と非常勤の雇用契約を結んだ。90分1こま、留学生に日本語を教えた授業数に応じ賃金が決まる。契約書に明記された雇用期間は「20年3月末まで」。非常勤講師は10人以上いた。

 新型コロナの感染拡大で、同年3月ごろから授業がなくなり「自宅待機」になった。対面授業の再開は7月に入ってから。4月以降も、非常勤の雇用契約が維持されていると認識していた。少しずつ授業数が増えた7、8月分の給与は通常通り支払われた。

 ところが9月上旬、突然、雇用関係がない「業務委託契約書」にサインするよう担当者から求められた。「非常勤講師の机にやって来て、そこにいた講師から流れ作業のようにサインを取っていった。私も署名してしまった。事前説明はなかった」と振り返る。業務委託への契約変更が、4月にさかのぼる内容と知ったのは後のことだった。

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 会社の都合で労働者を休ませた場合、会社側は休業手当の支払い義務が生じるが、業務委託契約を結んでしまうと対象から外れる。

 福岡労働局によると、今回の場合、講師の仕事に専門性があり、学校側から細かい指示を日々受けずに授業だけをこなしている点を踏まえ、業務委託の形式でも違法性はないとする。

 ただ、多くの労働相談を引き受ける連合福岡ユニオン(福岡市)の寺山早苗書記長は「4月にさかのぼって業務委託とすることで、休業手当の支払い責任が消滅し、学校側の負担は軽減される。休校が多くなるコロナ禍で、学校にとって経営メリットが大きいと判断したのではないか」と指摘する。

 業務委託に変更した理由などについて、学校側は取材に「答える必要はない」と回答している。

 契約変更で、講師はさらに痛手を負った。休業手当をもらえていない労働者を対象とする国の「感染症対応休業支援金・給付金」も対象外になったのだ。休業前平均賃金の80%を支給するもので、20年10月に申請した。ところが「休業している事業主に雇用されている労働者ではない」と、業務委託契約を理由に不支給とされた。

 講師は訴訟も考えたが費用などで難しい状況。「教育機関の対応とは思えなかった。コロナで困っている留学生も多いのに、しっかりとした対応ができるのか」と嘆く。講師は訴える。「労働者にとって不利な契約変更を、いつの間にか押し付けられないよう注意してほしい」 (竹次稔)

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