緊急事態解除へ 安心できる状況ではない

 政府はきのう、首都圏1都3県に出している新型コロナウイルス緊急事態宣言を期限の21日で解除することを決めた。2回目の宣言は、2カ月半で全面解除となる。とはいえ、安心できる状況には程遠いことを、私たちは肝に銘じるべきだ。

 新規感染者数は減少に転じ、感染状況を判断する指標の多くは改善した。しかし、首都圏の病床使用率は高い水準にある。感染者数が下げ止まり、リバウンド(感染再拡大)の始まりを指摘する声さえある。

 宣言が長引き、さまざまな制約を強いられる市民の疲労は蓄積している。「宣言慣れ」といった警戒感の緩みが一部で広がり、都心部では週末の人出が増えているという。宣言の引き締め効果は薄れつつある。

 感染状況が十分に落ち着いたというより、宣言効果の限界が見えたため、政府は解除に踏み切ったと考えるべきだろう。

 政府の分科会の尾身茂会長は「今までの延長ではなく、質的にも量的にもジャンプさせる必要がある」と対策の見直しを訴えている。濃厚接触者を洗い出す積極的疫学調査の徹底など、政府は対策の改善・強化に取り組むことが肝要だ。

 最も急ぐべきは、九州も含めて全国で感染確認が続く変異株への対策強化である。

 感染力が強いとされるだけでなく、致死率が高いという指摘もある。一部のワクチンの効果に疑義が示された変異株もある。変異株の流行は感染症対策に大きな影響を与えかねない。にもかかわらず、その検査は新規感染者の一部にとどまり、市中感染の実態が分からない。検査態勢の整備は喫緊の課題だ。

 変異株の感染が拡大すれば、病床は短期間で逼迫(ひっぱく)する恐れがある。現在、病床に余裕がある自治体も油断はできない。

 流行の「第4波」に備え、医療機関の役割分担の明確化や受け入れ病床の積み増し、軽症者向けの宿泊施設の確保などに力を入れる必要がある。

 新型コロナの感染防止で最も効果的な対策は、飛沫(ひまつ)感染の機会を減らすことだ。自治体は感染拡大の兆しを見逃さず、飲食店などへの営業時間短縮要請を積極的に検討すべきだ。無論、協力に応じた業者への手厚い経済的支援が欠かせない。

 宣言が先行解除された福岡県では、病床使用率は高止まりしている。高齢者施設のクラスター(感染者集団)が相次ぎ、若者を中心に、感染症対策の緩みも懸念される。

 今回、首都圏ではリバウンドも懸念される状況で、宣言が全面解除される。安心するのではなく、警戒感を引き上げる契機としなければならない。

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