お父さんはALSと闘った 「娘のために」記録出版

 全身の筋肉が徐々に衰える病になったテレビカメラマンが、家族や職場の協力に支えられ、力いっぱい生きた記録を妻が一冊の文庫にまとめた。「ALSと闘った日々-善一さんとの思い出-」(幻冬舎)。ALSへの理解が広がる願いを込めて自費出版した。

 長崎県島原市出身で、長崎放送のカメラマンだった松本善明さんがALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したのは、入社10年目の1985年だった。立ち上がろうとして転ぶ。横断歩道で転倒することも。当初は脊髄性筋萎縮症と診断されたが、病状からALSを疑い、治療に専念するため休職。県内外の病院を回った。

 発症から9カ月後、車椅子で復職。会社は動きやすいようにスロープを設け、操作する機器の高さを調整し、夕方のニュースの編集を善明さんに任せた。87年4月に33歳で亡くなる前日まで、仕事を続けた。

 それから33年たった昨年春。佐世保市で暮らす妻のしほりさん(仮名)は、コロナ禍をきっかけに家の中の物を整理していたとき、善明さんへの弔辞が掲載された社内誌を見つけた。

 「娘に父親の記録を残したい」。亡くなったとき、2歳だった娘は善明さんの記憶がほとんどない。3日で原稿を書き上げた。文中は「善一」と仮名にした。

 善明さんが病と闘っていた頃、バリアフリーは社会に浸透していなかった。ぎこちない動きに奇異の目を向けたり、心ない質問をしたりする人もいた。時代は進んだが、まだALSを知らない人もいる。

 「ALS患者への理解が広がってほしい。不自由な人には優しい目を向け、必要なときにはさっと手を差し伸べてほしい」

 執筆を機に、しほりさんはALS患者と家族を支援する日本ALS協会に加わった。新型コロナの感染が落ち着いたら、患者の訪問活動などのボランティアに参加する。本は税込み660円。

 (平山成美)

関連記事

長崎県の天気予報

PR

長崎 アクセスランキング

PR