山あい走る「シーサイドライナー」⁉ JR九州で珍事

 海岸沿いの路線をイメージさせるJR九州の列車「シーサイドライナー」が、今春のダイヤ改正をきっかけに内陸部を走るJR豊肥線に登場したとの情報が本紙「あなたの特命取材班」に寄せられた。車窓からは海が見えないのに…。どうしてこんな春の珍事が起きたのか。事情を探った。

 海をイメージさせる青色の塗装に「SEA SIDE LINER」(SSL)のアルファベットが車体に踊る。実はこの車両、長崎県内の長崎-佐世保間で快速や区間快速として親しまれてきた列車だった。穏やかな大村湾の海沿いを駆け抜けることから、この愛称が付けられた。

 JR九州によると、SSLとして運用してきた車両形式がキハ200形、220形の列車は今春のダイヤ改正に伴い、11日をもって長崎県内での運行が終了。昨年春以降、省エネタイプの新型車両が導入され、1994年から営業運転してきた同型車両を他の地域に転籍させることになった。

 佐世保車両センター(長崎県佐世保市)に所属していた計12両が熊本、大分、鹿児島にそれぞれ4両ずつ配置転換。活躍の場は九州各地に移ったものの、SSLの外観はそのままで運行しているため、内陸部の乗客の間にちょっとした違和感が生まれたのだ。

 九州を横断し、主に山間部を走る豊肥線や久大線に転用されたSSLが海沿いを走ることはない。ただ、有明海を望む区間がある三角線を走る場合があり、その際は名前にふさわしい役割を果たしている。鹿児島県内でも指宿枕崎線の鹿児島湾沿いでは潮騒を感じられそうだ。

 鉄道会社はダイヤ改正や新型車両導入などを機に、特定路線で走らせていた車両を別の路線に置き換えて運用することが多い。JR九州では特急でも、かつて鹿児島線の博多-西鹿児島間で運行していた「つばめ」の車両を、博多-長崎間「かもめ」や、博多-小倉・門司港間「きらめき」などとして運用している。

 配置転換を伴わなくてもオレンジ色の塗装が目を引く特急「ハウステンボス」の車両を博多-小倉・門司港間で運行する例もある。車体に大きく「ハウステンボス」と書いてあっても、ハウステンボス(長崎県佐世保市)には行かない。

 JR九州は、見た目で運行路線や地域をイメージしやすい列車が多いとされ、車両繰りの都合で「似合わない」路線を走る現象が生じがちだ。会員制交流サイト(SNS)上では今回のSSLの配置転換について「どこがシーサイドやねん」との反応もある。半面、鉄道ファンの間では「レアな列車」と注目される。

 内陸部しか走らないSSLが見られる珍事は期間限定になりそう。2022年後半から23年前半をめどに車両の塗装変更を計画しているためで、その時点で見納めとなる。熊本、大分地区は赤色、鹿児島地区は黄色の車体に生まれ変わる予定だ。JR九州は「それまでSSLのご愛顧を」としている。(布谷真基)

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