待合室は妊婦だけ、両親学級中止…コロナで一変した病院の風景

妊娠とコロナと私(記者)④

 病院の広い待合室に、ポツンポツンと座っているのは全て女性。すっかり見慣れてしまった光景だ。妊婦健診で私が通う病院は新型コロナウイルス感染予防のため、昨年4月ごろから院内への配偶者や家族の付き添いができなくなった。

 念願の第1子の経過に一喜一憂している夫は、元気に小さな手足を動かす、わが子のエコー映像をリアルタイムで見たことがない。病院でもらった写真を見せては「これが頭で、あっちが足」と説明するが、夫は「うーん、よく分からない」。たぶん私も写真だけ見たら同じ反応だろう。

 昔、母が私を妊娠中、よく父は健診に付き添ったそうだ。胎児の成長を実感できる大切な機会だった。同様の夫婦が多く、待合室には男性陣がずらりと立っていたという。こうした風景はコロナ禍で一変した。

 なくなったのは付き添いだけではない。病院が開く母親教室なども中止になった。特にお風呂など、赤ちゃんの世話について夫婦で学ぶ両親教室がないことに、夫は不安がっている。

 出産後の入院期間中、私は赤ちゃんの世話についてさまざまに学べる。しかし、夫は経験がないまま、世話がいきなり始まることになりそうだ。教室の資料はもらえるが、やはり実地で教わるのとは違う。

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 NPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)が実施した「コロナ禍前後の妊娠出産アンケート」でも、わが家と同じような状況がうかがえる。

 妊婦や家族など558人に、妊娠中に希望したことが実現したかどうかを尋ねた。「妊婦健診時のパートナーや家族の同伴」については、コロナ禍の前に妊娠した夫婦は9割近くが実現。一方、コロナ渦で妊娠した夫婦は7割以上が希望したものの、実現は全体の3割にとどまった。

 「病院・産院の両親学級などを受講」はコロナ前後でともに7割以上が希望。コロナより前はほぼ実現できたが、コロナ禍では全体の2割以下だった。

 健診の付き添いや両親学級について重要度が高いと答えた人からは「パートナーに赤ちゃんが育つ様子や注意点などを実感してほしいから」という考えが寄せられていた。

 赤ちゃんが生まれた後の生活を具体的にイメージする場だったのだろう。コロナ禍で一変した病院風景の陰に、不安な思いを抱える男性陣や、配偶者との温度差に心細さを感じる妊婦も少なくないのかもしれない。

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 現在は妊娠8カ月。私が住む福岡市では、保健福祉センターが感染予防対策を取りながら両親教室を開いている。だが、私はあいにく「切迫早産」の診断を受け、安静にしておかなければならず、市の教室に参加できていない。

 代わりに、わが家は動画サイトを活用している。コロナ禍を受け、自治体などが両親教室で学ぶ内容を動画にまとめて、アップしている。

 例えば、福岡市はウェブサイトで公益財団法人「母子衛生研究会」の動画を紹介。新生児の抱っこやおむつ交換を助産師が解説している。埼玉県入間市は動画投稿サイトユーチューブ」でミルクの作り方などを説明。夫と一緒に見て、イメージを膨らませている。

 居住地や日時に関係なく誰でもアクセスできるのは「リモート教室」ならでは。予定が合いにくい夫婦にとっては、こうした取り組みの広がりはむしろありがたいのかも。少しでも安心して赤ちゃんの世話ができるよう、自習に取り組もう。 (黒田加那)

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