ミャンマー少数民族、デモ隊を支援 「反国軍」でも本音は複雑

 【バンコク川合秀紀】国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーで、自治拡大を求めて国軍と長年戦闘状態にある地方の少数民族勢力の動きが注目されている。反国軍デモを支援するほか、支配地域では国軍への攻撃を開始。アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)側も共闘を呼び掛けている。だが、不遇が続いた少数民族勢力側の本音は複雑で、温度差は隠せない。

 「拘束を避けるため、しばらく遠くに行く」。国軍が最大都市ヤンゴンの一部に戒厳令を出した直後の3月半ば、職場放棄の抗議運動を主導する20代活動家は記者に告げた。行き先はタイ国境に近い東部の少数民族地域だった。

 この活動家に限らず、国軍の弾圧を避けて少数民族地域に向かうNLDやデモ隊関係者が増えており、国軍側は23日の記者会見で「千人以上が少数民族地域に逃げている」と明かした。

 政府が国民と認める少数民族は約130あり、総人口の約3割とされる。約20が自前の武装組織を持ち、ミャンマー独立以来、国軍との戦闘状態が続いてきた。このうち10の少数民族勢力は2月下旬、国軍との対話中断とデモ参加者支援などをうたった共同声明を発表。支配地域では国軍を寄せ付けない力を持つ武装勢力もあり、格好の避難場所になっている。

 中国国境に近い北部カチン州などではデモに参加した住民が国軍の銃撃で死亡したため、少数民族の武装勢力が3月上旬以降、州内の国軍基地にたびたび報復攻撃を仕掛けている。会員制交流サイト(SNS)では攻撃を歓迎する投稿が相次ぎ、国軍記念日の27日を前にさらなる“武力蜂起”を期待する声も増える。

 ただ、この勢力は共同声明を出した10の少数民族グループに属しておらず、NLDとも距離を置く。少数民族系の独立メディアBNIは23日、「少数民族の闘いが長年続いてきた理由をまだ知らない民族もある」との識者の声を報じた。多数派のビルマ族が占め、政権を取っても少数民族の自治拡大に動かなかったNLDにくぎを刺した。

 国軍はNLD政権時に進まなかった少数民族和平に積極的に取り組む方針を強調。衝突が相次いだ西部ラカイン州では、NLD政権がテロリスト集団に指定した少数民族勢力に対して国軍が指定を解除し、拘束中の幹部も釈放。これを受け同勢力の一部は軍政組織に加わった。一方、NLD議員らでつくる「臨時政府」も少数民族勢力のテロリスト指定を取り消し、デモ参加者への支援を感謝する声明を発表した。国軍、NLD双方が地盤強化のため少数民族側に相次ぎ秋波を送っている構図だ。

 旧軍政時から少数民族和平の仲介に取り組み、少数民族と国軍、NLDいずれにもパイプを持つ「日本ミャンマー未来会議」代表の井本勝幸・日本経済大特命教授(56)=福岡市出身=は「NLDと多くの少数民族勢力がここまで『反国軍』で一致したのは異例」と語る。一方で「少数民族側の目標はあくまで自治の確保と国軍の排除。自ら域外に出て国軍に挑むことはあり得ない。国軍と臨時政府双方の出方を注意深く見ている」と指摘する。

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