ある少女と「おにぎり」

 人生で忘れられない食べ物を一つ、と聞かれて何を思い浮かべるだろう。行きつけ店の逸品、甘いスイーツ、家族の手料理…。思い出深い味は人それぞれ。ある少女(18)にとって、それは「おにぎり」だった▼小学生の頃から続く父親の暴力がつらくて、家出を繰り返した。17歳の時、父に携帯電話を壊され、預金通帳も奪われた。所持金は千円ちょっと。夜の街を歩き回り、疲れ果て公園のベンチに座り込んだ時。「大丈夫かい」。近くで飲食店を営む男性が声をかけてくれた▼家出のいきさつを話すと「ちょっと待っとけ」。店に戻った男性は手作りのおにぎりを一つ、届けてくれた。梅干しが入った、しょっぱい味。ぼろぼろ泣きながらほおばった。人のぬくもりが詰まったあの味が、忘れられない。 (鶴善行)

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