国会折り返し 「政府の劣化」が目に余る

 国会の運びは日程上順調に見えても、菅義偉首相の国政運営は随所で不調を来し、国民の政治不信はむしろ増幅している。首相はこの「落差」を直視して後半国会に臨むべきだ。

 総額106兆円余の2021年度政府予算が一昨日、国会で成立した。新型コロナウイルス禍が続く中、過去最大規模となる予算の早期成立にこぎ着けたことで、菅政権はひとまず前半国会を乗り切った格好だ。

 ただ釈然としない国民も少なくなかろう。前半国会では、コロナの感染防止対策やワクチンの供給・接種体制の遅滞がクローズアップされた。総務省官僚らの接待問題などの不祥事も次々に発覚し、根深い政官業の癒着構図があぶり出された。

 予算審議の終盤では、政府が今国会に提出した法案・条約案24本の条文や参考資料に誤りがあったことが判明した。前代未聞の驚くべき失態だ。政府は原因究明と再発防止のプロジェクトチームを立ち上げるという。これも「政府の劣化」をうかがわせる深刻な事態である。

 野党はこうした問題を厳しく追及しつつ、コロナ対策の重要性を踏まえ、審議を先延ばしする戦術は避けた。その結果、新年度予算自体はすんなりと成立したわけだ。菅政権はこの流れを良しとしてはなるまい。

 共同通信の直近の世論調査では、政府のコロナ対策を「評価しない」が5割を超え、首相の長男が関与した総務省の接待問題で「首相の説明は不十分」という声が7割余に達した。

 コロナ感染は緊急事態宣言の全面解除からほどなく東京や大阪、宮城など各地で再拡大の様相を見せている。変異ウイルスの急速な広がりも気掛かりだ。政府は国民の安心と協力が得られるよう早急に全般的な対策の点検と見直しを図るべきだ。

 接待問題も第三者による検証委員会の設置で決着したわけではない。閣僚も含めて利害関係者との会食の有無を調べ、途中経過も国民に公表すべきだ。調査対象者が多いことを理由に、検証作業の「時間稼ぎ」を図るような姿勢は許されない。

 菅首相は来月、米国を訪問しバイデン大統領との首脳会談に臨む一方、後半国会では目玉施策のデジタル庁設置関連法案の早期成立を目指す。自民党内ではこれらが衆院解散・総選挙への下地になるとの見方もある。

 しかし、コロナ禍の収束が見通せない中、解散の大義も見当たらないのが実情だろう。国会の折り返し点に当たり、首相に求められるのは「国民のために働く内閣」として襟を正し、国政を立て直すことだ。政治への信頼回復に向けて、あくまで謙虚な姿勢を強く求めたい。

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