女性消防団員、高齢者宅で防災指導25年 コロナで休止…再開模索

 北九州市の女性消防団員が、1人暮らしの65歳以上の高齢者宅を訪れて防火や防災について指導する「いきいき安心訪問」が活動開始から25年を迎える。全国的にも珍しく、市消防局は成果を上げているとしているが課題もある。昨年からは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休止中。消防局は「火災や災害で高齢者の犠牲者を出さないためにも必要な事業」と早期の活動再開を模索している。

 活動開始のきっかけは1993年度、女性団員側から「高齢者が犠牲になるリスクを減らすため、自宅訪問による予防活動をしたい」との要望が出たこと。火災や災害が起きると高齢者は逃げ遅れて被害に遭いやすいとの問題意識があった。

 活動開始は96年7月。女性団員が2人一組となって地域の民生委員との相談などで決めた32世帯を各組それぞれが受け持ち、1年間かけて回る。

 訪問時には、質問票に従って高齢者本人の健康状況、住宅用火災警報器設置の有無、暖房器具やこんろ周りに燃えやすい物がないかなどを確認する。

 高齢者の許しが得られれば家に上がり、より細かく点検する。寝具の近くに灰皿がないか、コンセントに差し込んだ電源プラグにほこりがたまっていないか、家具の転倒防止策がとれているかなど、高齢者が普段それほど意識しないと見られる点もチェックする。

 家の中にごみや物が散乱していたり、火の取り扱いが懸念されたりする例に気づいた場合は所属する消防署に連絡し、消防職員が改めて訪れて対応する仕組みだ。

 お年寄りたちが抱える介護など生活に関する不安にも、できる限り対応しようと開始当初から半分以上の団員がホームヘルパー3級の資格を取得。3級の資格が廃止された後も多くの団員が介護職員初任者研修の修了に努める。「介護施設へ入りたいが連絡先がわからない」といった声を聞いたら行政につなげたり窓口の連絡先を伝えたりしている。

    ◇   ◇

 いきいき安心訪問による訪問件数は毎年度2千世帯以上。一方、市消防局職員は、80歳以上の高齢者宅を対象に火災の予防、啓発を目的とした訪問活動をしており、年間約3千世帯を回っている。八田博文消防団課長は「消防局職員だけでなく消防団員にも加勢してもらうことで、多くの高齢者世帯に訪問でき市民の安全、安心な生活の確保に向けて、より厚い予防活動ができている」と語る。

 だが課題もある。防犯意識の高まりから団員の訪問を警戒する高齢者も少なくなく初代女性消防団員で、当初からいきいき安心訪問に携わる門司消防団本部の城田美絵分団長は「ここ10年くらいは家の中に入っての助言は難しく、玄関先での聞き取りで精いっぱい」と話す。

 団員は訪問の際、不審者と間違われないよう団員証を必ず持参、消防団の名前が入った活動服や制服を着ている。女性消防団員そのものの存在を知らない人もいるため、門司消防団では女性団員もはしごの上で曲乗りする「はしご操法」を市内イベントで披露するなど女性消防団員の知名度アップにも取り組む。

 いきいき安心訪問の活動は新型コロナウイルスの影響で昨年2月から休止。再開のめどは立っていない。城田さんは「訪問してお年寄りと直接向き合うからこそ、お年寄りの防火・防災の意識をより高められる」と意義を強調し、早期の活動再開を願っている。 (笠原和香子)

【ワードBOX】北九州市の女性消防団員

 1988年に誕生し2020年4月現在、148人いる。全団員1884人の約8パーセントに当たる。148人は18~66歳で学生や会社員ら。男性団員が主に火災や台風の災害現場で消火活動などに従事するのに対し、女性団員は地域住民向けに防火・防災の啓発活動に取り組む。男女団員ともに北九州市の非常勤特別職の地方公務員で、団長や分団長などの階級に応じて年間約3万7千円~約8万3千円の報酬があり、出動時には「費用弁償」も支給される。いきいき安心訪問も費用弁償が支給される。

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