裕次郎、きよし、島津亜矢、前川親子…レコード店主のスター交遊録

 九州のレコード・CDショップ19店が協力し、九州ゆかりの演歌歌手の名曲を集めたCD「絆 きらぼし演歌」が好評だ。企画した「ミュージックプラザ・インドウ」(福岡市)の印藤泉社長(70)は、レコード店の2代目として、業界の栄枯盛衰を味わいながら、有名歌手との交流を深めてきた。その一端を披露してもらった。

 父勝美さんが福岡県志免町に店を構えたのは、終戦から間もない1948(昭和23)年。海軍から帰還して勤めたガラス製造会社で「ガラス3枚」を退職金代わりにもらい、クラシックのレコード販売を始めた。

 娯楽に飢えていた人々の心をつかみ、福岡市内に進出。一時は中洲に本店を構え、清川や天神に支店を出した。昭和30年代の初め、美空ひばりが新曲の宣伝で店を訪れたが、客があふれたため店の前の映画館に会場を変更したこともあったという。

 レコードはカセットテープになり、やがてCDへ。そして音楽業界に荒波が押し寄せる。日本レコード協会によると、CD生産額は携帯電話やインターネットの普及を背景に、1998年の5879億円をピークに下がり続け、2020年には約2割の1269億円にまで落ちた。逆にネット配信は783億円まで伸びている。

 レコード店のピンチ。そうした時代の流れに抗するため、印藤社長は秘策を思いつく。それがオリジナルCDだ。レコード会社から許諾をもらい、歌手のベスト盤や今回のようにテーマを決めたオムニバスを作った。当初は許諾を渋っていたレコード会社も業績悪化を背景に、徐々に前向きになっていった。

 好評だったのは、昭和の大スター石原裕次郎の名曲集。2017年、石原裕次郎記念館(北海道小樽市)が没後30年の節目で閉館することを聞きつけ、閉館日に狙いを定めて売り出した。小樽市での閉館式典に駆けつけた印藤社長に、妻の石原まき子さんも喜んだ。

 千枚売れれば上々と言われる中で、裕次郎の名曲集は3千枚以上を売り上げた。曲の解説も付け、ファン心理をつかんだ。「お客さんが本当に聴きたい曲が詰まったものなら売れる」と確信したという。

 店では新曲の発売などに合わせて、ミニライブも開催している。九州ゆかりの演歌歌手では、石川さゆりがデビュー間もない17歳の時に訪れた。

 地元出身の氷川きよしはぶらりとサインを書きにやってくる。福岡でのコンサートでは楽屋に有名メーカーのカステラを差し入れ「何で僕がこれを好きだって知ってるんですか」と喜ばれた。

 歌手の記念すべき瞬間に立ち会ったことも。2001年、NHK紅白歌合戦の出場歌手が発表された日は、福岡市で開催予定だった島津亜矢のコンサート会場にいた。「初出場が決まりました」と楽屋で報告を受け、一緒に喜んだ。

 前川清の息子、紘毅(ひろき)のデビューを応援したのが縁で、2017年には、店がある天神・新天町の食堂で前川親子のショーを開いたこともある。そうやって縁をつなぎながら、これまでに製作したオリジナルCDは700種類を超えた。

 「忘れられた名曲は、まだたくさんある。今後も掘り起こしていきたい」と印藤社長。次はテレサ・テンや越路吹雪、ナット・キング・コールなどのベスト盤企画を温めている。 (加茂川雅仁)

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