天神一望ランチに別れ…福岡市役所食堂、31日閉店

 福岡市・天神の市役所本庁舎15階にある職員食堂が31日、32年の歴史に幕を下ろす。天神一帯を見渡しながら、割安感があるランチを味わえる場として、市職員だけでなく、会社員や地元住民たちでにぎわってきた。新型コロナウイルス禍以前の来客は1日700人。受託業者「ランチミッション」社長の久保野良英さん(63)は「しっかりした食事を提供して喜んでもらいたい」との思いで最後の日まで営業を続ける。 (横田理美)

 久保野さんは食材の仕入れなどを担当しながら、自らレジに立つこともある。約240席が埋まる昼時には客がお金を出す前に、釣り銭を予測して、その手に用意して行列を解消する。フロア担当の女性5人は注文を受けながら客の様子を見て「何かお探し?」と気配りを絶やさない。久保野さんは「当たり前を当たり前にできるスタッフばかり」と胸を張る。

 食堂は本庁舎開庁の1988年、職員の福利厚生の一貫で営業を開始。久保野さんは2004年、先代から食堂を引き継いだ。05年の福岡沖地震では調理場に物が散乱。スタッフ総出で片付け、週明けには被災対応に奔走する職員に「平常運行」で寄り添った。

 出会いもあれば別れもある。数年前、常連の高齢女性が顔をみせなくなった。しばらくすると「亡くなった母が通っていた」と女性の娘が顔を出すように。今ではすっかり常連だ。

 毎朝9時半の開店直後にやって来るのは南区の長浦哲夫さん(80)。久保野さんが「手間暇掛けた」と語る健康弁当と豚汁を注文し続けて6年。長浦さんは「おかげさまで健康そのもの。皆さんと会えるのを楽しみに通った。寂しくなるね」と惜しむ。

 最後の1年はコロナ禍で客が3割も減っていた。「肩の荷が下りる」と久保野さん。ただ天神地区は複数のビルが再開発中で飲食店が減っている。「ここが無くなったらどこで食べるとやろう」と気にかける。

 市役所北別館の解体に伴い、一部の部署が本庁舎の食堂部分に移るため、食堂は31日で営業を終了する。オーダーストップは午後3時。「終わるというより時代の変化と捉えている。最後まで淡々とこなす」と久保野さん。「おいしい」の笑顔のため、変わらない気持ちでレジに立つ。

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