福岡県、虐待リスク評価未導入 児相と町、連携不足に

 福岡県篠栗町で昨年4月、5歳の男児が餓死した事件で、対応した福岡児童相談所(同県春日市)が、事案の緊急性などを評価して町と共有する「共通リスクアセスメントシート」を作成していなかったことが、関係者への取材で分かった。厚生労働省は作成を求めているが、福岡県は仕組みを導入していなかった。専門家は「危機意識を明確にし、対応の方向性が共有できていれば、踏み込んだ対応ができたのではないか」と指摘する。

 シートは、児相や市町村が、虐待の内容や家庭環境などについて把握できた状況や、必要な対応を書き込み、関係機関で共有する評価表。リスクの過小評価を防いだり、児相と市町村のどちらが主体的に対応するか適切に判断したりして対応漏れをなくす狙いがある。厚労省は2017年3月、都道府県などに活用を求める通知を出した。

 厚労省によると、18年度時点で全国約6割の児相が活用。福岡県は21年度中の導入を目指しており、県児童家庭課は「各市町村でマンパワーに差があるため、使いやすいシートの様式を決めるのに時間がかかった」としている。

 事件を巡っては、男児の体重が19年9月ごろから減り、町や児相でつくる協議会は同11月、母子を見守り対象に決めた。協議会は月1回の会議で、家庭訪問をした際の状況などを共有していたという。

 ただ、男児は幼稚園に来なくなり、母親から詳しい話が聞けず、養育状況がはっきりと分からない状態が続いた。県警や近隣住民から育児放棄が疑われる通告もあったが、危険度を最も低い「C」としたままで、児相が主体的に関わることはなかった。

 男児が亡くなる1カ月前からは、祖母が児相に「孫の安否を確認してほしい」と繰り返し相談したが、児相は町に伝えていなかった。

 元児相所長で認定NPO法人「児童虐待防止協会」(大阪市)の津崎哲郎理事長は「深刻さが正確に理解できておらず、児相と町の連携不足もうかがわれる。シートを使うなどして、事態が悪化していった状況を的確に共有すべきだった」と話す。

 県によると、県内の児相が対応した19年度の児童虐待件数は9211件(うち福岡児相は1334件)で、15年度の3・8倍(同3倍)に増加。津崎理事長は「案件が急増し、人手が足りないだけでなく、専門性を持った人材育成が追いついていないのではないか」と懸念した。 (山口新太郎、古川大二)

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