古墳好き高じて「古代フェス」 ものづくり通じロマン伝えたい
シン・フクオカ人 #28
〈「住めば都」と思えるのは、人との交わりがあってこそなのだろう〉
考古学なんて、全く興味なかった。まさか自分が、古代愛好家を名乗り「古代フェス」まで主催する日が来るなんて。中村麻衣子(41)は、地元大阪から福岡市に移住してきた頃を振り返る。
福岡は夫の出身地。学生時代に交際を始め、就職後は大阪と福岡の遠距離恋愛が続いていた。2008年に移住したものの、実は福岡を好きになれずにいた。
「みんな地元愛が強すぎて『福岡いいとこやろ?』アピールがすごい。何だか逆に引いてしまって」
そんな時に出合ったのが、うきは市の
福岡は九州でも群を抜いて古墳が多く、1万基を超える。九州国立博物館(太宰府市)が発足させた同好会「きゅーはく女子考古部」で学びながら、各地を訪ね歩いた。一緒に楽しむ仲間が増え、気づけば福岡が大好きになっていた。
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「古代フェス」は福岡市のギャラリーで2015年に初開催した。考古学イベントは通常、子ども向けや親子参加型が多い。「だから、大人が全力で楽しめるイベントをつくりたかった」
柱の一つが、九州の
コメを蒸す
「作品を作ることで文化財のストーリーを伝えられる。これも一つの考古学。『ものづくり考古学』なんだと思うんです」
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フェスでは、学芸員らを招いた対談配信や交流イベントも。元軽音楽部の夫と披露したオリジナル曲「
福岡市での開催は、新型コロナウイルス禍の状況を踏まえてオンラインに切り替えた。3月の1カ月間、対談配信やグッズ販売を行い、全国からファンが訪れた。昨年始めたウェブサイト「古代press(プレス)」や、音声配信アプリを使った番組「オール古代ニッポン」でも、考古学のおもしろさを伝えている。
だが、全ては趣味の世界。本業はコワーキングスペース(共同利用型の仕事場)の運営スタッフだ。大阪時代は専門学校で広報を担当した。仕事で培ってきたスキルが、イベント企画や情報発信に役立っている。
なぜこれほどまで考古学に熱を上げるのか。
「いま文化財があちこちに残っているのは、地域の人たちが守ってきたから。イベントを通じて知ることで、自分事になる。それが守ることになる」
発掘や保存、研究だけが考古学ではない。何世紀にもわたり受け継がれてきたものを、自分なりのかたちで守っていきたい。
=敬称略(山田育代)